第213話:難癖つけられるが…

 森での討伐は翌日だと教えて貰い、リョータは食堂で人より少なめの量を平らげ、自室に戻ろうとしていた。


 ふぁ~…食った食った…異世界の料理って多すぎるんだよねぇ。


 今度、団長さんに弁と…あ、弁当って概念が無い可能性があるわな。


 まあ聞くだけ聞けば大丈夫だろ。


 団長に聞くつもりでいる事柄は「弁当を持参して良いか?」と言う事。


 勿論、駄目な場合は食堂での食事量を更に少なくして貰う相談をするつもりでいる。


 まあ普通は鱈腹くえるんだろうけど、俺の場合は昔っから小食だもんなぁ…これ、普通の量を喰えって言われたら無理ですって言うしかなくなるもんな。


 食えない事を理由に絡まれる可能性が出て来そうなんだ…け…。


 思考がそこで止まってしまったのは、元クラスメートの男子がいる為。


 人一倍リョータの強さを知ろうとした人物でもあるのだ。


 ・・・やーな奴に睨まれてるなぁ…何しかけられっかね。


「随分と食わないんだな」


「完食しなきゃならないって言われてないんだけど?」


 正論を言われてしまえば、それ以上の問いかけが出来ず苦虫を噛み潰したような顔つきになった。


 わちゃぁ~…すんげぇ形相。


「動いてる筈なんだから完食できるだろうが!」


 うぉっ?!逆ギレ!?そう来るなら…


「入学時に先生が多すぎるからって言ってくれて、

 減らしてくれたんだけど、

 先生の意見を曲げなきゃ駄目なの?」


 こう返してやる。


 「攻撃」ではなく「口撃」。


 見た目年齢年下だが人生経験で言えば年上。


 「言い争い」なら負ける訳がないのだ。


 先生の許可で少なくても良いと言われたのだと知ると、それ以上「追い詰めるネタ」が出て来ないのか、悔しそうな顔をして、その場から立ち去った。


「大丈夫だったようだな」


 そう声を掛けて来たのは偶然、リョータが絡まれている所を目撃した団長。


「あ、団長さん。

 元々ぼく、小食なんだ。

 だから入学して食堂で初めて食事した時、

 大半を残してしまったんだ。

 それを見て先生が少なくして貰うって言ってくれたんだ」


「胃袋が小さいなら量的に少なくなるのは仕方ないからな。

 それを・・・リョータの同級生は何と言うか…」


 言い表す言葉、こっちには無いんかね?


 「身から出た錆」とか「論より証拠」とか「馬鹿は薬をつけても治らない」とか…無いからこそ困ってんだろうね。


 某武将とか聖女様すら文献に「ことわざ」残さなかったんだろうねぇ。


 そこまで阿呆はおらんいなかっただろうし…。


「仕方ないよ。

 僕、魔法学校では強い理由を知りたい人が多かったし、

 勉強できる理由を知りたい人すらいたもん」


 団長さん、俺の言葉きいて口あんぐり・・・唖然呆然としてるけど、大丈夫かね?


 まあ常識知らずな阿呆ばかりだったとは言わないが、それくらい酷かったからねぇ。


 来年4月には、もしかしたら「選定の儀」は廃止されるかも?

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