第209話:体力・・・落ちてました

 刃を潰した剣を用意し、いよいよ騎士としての勉強を始める事となったリョータは、問題児が絡んだ時に行う筈だった体力測定に挑む事となった。


「先ずは、運動着で周回を走って貰う。

 それぞれ位置について…始め!」


 何周もする事を考えれば、それほど早い速度で走る事はなく、タッタッタ…と土を蹴る音だけが周囲に響く。


 あの問題児くんは、これにすらついて行けなかった、と聞いてるんだよね。


 確かに「少し遅いくらい」ではイライラする阿呆もいるよねー。


 5周した所で普通の体力自慢でも少し疲れが見え始めるのだが、流石、騎士を目指しAクラスに在籍する猛者たちは、平然と走っているのだ。


 リョータも体力強化しているものの、流石に同じ場所ばかり走っているからか、少し疲れを感じ始めていた。


 う~ん…あまりにも「暴れてなかった」弊害が此処で出たのかねぇ。


 ちと息が上がってきやがった。


 10周、20周…と増え続ける周回…リョータは25周目で脱落してしまった。


 も・・・う無理ぃぃぃぃ(涙目)。


 はぁ…はぁ…と息を荒く吐き出しているものの、年齢を考えれば25周、耐えた事は褒められる案件ではあった。


「30周は無理だったが、

 年齢を考えれば体力はあるほうだな。

 お疲れさん」


「団…長…さ…」


「喋らなくていいから、

 そのまま体力が戻るまで大人しく寝ていろ」


 大の字で寝そべっている姿は、他のクラスにも見られてはいるが、相手が10歳の子供だと理解している為、大目に見てくれてはいる。が、Fから3人組からは冷ややかな声が飛んで来る。


「団長も耄碌もうろくしちまったようだな」


「あははは!

 言うねぇ。

 確かに、

 あんな体力なしがAな訳ないもんな」


 耄碌したと言われた団長さんではなく、動いたのは副団長さん(みたい)。


「それに小さいのがいる事じたいが、

 変だ…」


 変だろう、と言うつもりだったのだろうが、頭にゲンコツが落とされ悶絶してしまい、言葉を続ける事が不可能な状態になったのだ(お~…痛そう)。


     ガッ!ガッ!ガッ!


「「「いっ?!」」」


「・・・団長殿を嘲笑う余裕があるようだな。

 お前たち3名は、

 30周、走り終わるまでは帰れない罰とするが、

 構わないな?

 彼や団長を馬鹿にするくらいだ。

 それくらいの体力を持っているのだろう?」


 3人同時に血の気が引いて行くのが手に取るように見え、彼ら以外の生徒は「身から出た錆」と思っている。


「そ、それは…いくら何でも」


「横暴です!」


「あんなチビがいる事が間違って…」


「特例で騎士としての技術を学びに来ていると、

 通達がなされているのだが?

 お前ら3人で彼と戦ったとしても、

 負けるのはお前らだぞ」


 あのぉ…立たなくていいフラグを立てないで下さい!


 もしかしなくてもコレも巻き込まれ体質が発揮されちゃってるの?!


 立つ筈も無かった巻き込まれ体質のフラグが立ってしまった瞬間となった(もう嫌だぁ)

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