第208話:町中で起きた事件(3)

  侯爵様が切り付けた瞬間から血止めは施されているようで、ポタポタ血が流れるという事態は免れているが、剣を持ったままの右手を何とか動かし「姑息な手段」を取ろうとしてるのが見受けられる。


 ・・・こいつ、典型的な阿呆だわ。


 魔法で右手首を動かして剣を俺に向けようとしてるけど、動かせず「あれ?!」って顔してるもん。


「ところで、

 お前は何をしようとしてる?

 私が被害を最小限に留める為に、

 切り落としたモノを使って何をするつもりだ?」


「そ・・・れ・・・はっ・・・」


 見つかってしまったからなのか、血の気が更に減り真っ青になって行く。


 馬鹿だよなぁ…学習すりゃーいいのに、同じ事を繰り返そうとしてやがる。


「途中入学した生徒は、

 騎士として入学したのではないと聞いているが、

 お前は元々、

 騎士になるべく入学しているにも関わらず、

 途中からの生徒に負けたのだぞ?

 いい加減に認めなければ…」


「っ!嫌です!

 あそこは行きたくありません!!」


 ん?何か厳しい場所でもあるのかね。この言い方だと。


「団長殿、

 我が愚息が負けた相手は、

 そこにいる彼ですね?」


「はい。リョータと言います」


「リョータ殿」


「・・・僕、騎士として入学してないし、

 平民だから呼び捨てでお願いします」


「団長殿から見てリョータは、

 我が愚息と比べて才はあるのですか?」


 ゎぁ~ぃ…変なフラグ立ってないかーい(ナンテコッタ)。


「才はあると思います。が、

 彼は剣術の基礎を学んでおりませんので、

 どれだけ化けるか未知数に御座います」


 ち・・・ち・・・ち・・・ちーん♪


 化けるって…騎士として生計立てる訳じゃねぇのに、この言い方って事は基本を冒険者としても活動できるし騎士としても活動できるとか言わんよな?


 言わないでくれぇ(切実)。


「基礎を得てない?

 そんな相手には負けた…と?」


 侯爵が愚息を睨みつけたのだが、その殺気に満ちた視線は耐えられなかったのだろう。


 うわぁ…怖い怖い、問題児くんは漏らしてるし。


「えぇ。

 彼は冒険者として活動してますので、

 騎士としての剣捌きを身に付ければ、

 騎士団長…いえ、

 近衛団長になれる逸材かと思われます」


 ちょっと待てぇ~い!


 何で此処で近衛が出てくんだよ!


 王族守れる程の実力があるなんて言われたら、あの領主が余計、欲しがるじゃんか(や~め~て~)。


「そうか、

 まあ何時までも、

 愚息を見世物にするのは忍びないので、

 連れ帰るとするよ」


 清潔魔法クリーンを掛けられた問題児くんは、引きずられるようにして馬車へと乗せられ、何処かへ行く事が決まったようだ(ご愁傷様~)。


「良く気付けたな」


「ん?

 ああ、あの問題児くんが隠れてるって言うのに気付けたのは、

 一瞬だったけど、

 僕の位置を確認する為に頭を出したんだよ」


 何とも間抜けな…と言う顔になった団長ではあるが、リョータの練習用武器を調達しなければと、彼を伴って武器屋へと入って行ったのだった

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