第206話:町中で起きた事件(1)
団長は魔法寮のままで途中入学となったリョータの自室へと向かうと、扉の外から声を掛ける。
「リョータ、
練習用の剣を武器屋で調達するから一緒に出よう」
ガチャっと扉が開くと、小桜と共にリョータが出て来た。
「わざわざ団長さんが案内して下さるんですか?」
子供らしい答え方ではなく、まるで大人のような答え方に団長は、目を見開いてしまう。
「あ、ああ。そうだ、が…
リョータだよな?」
「そうだよ?
あぁ。喋り方が大人っぽかったから違和感、
あったんだね。
一応、年長者には、
丁寧な言葉遣いを心がけてるんだけど…
やっぱ違和感あるよね?」
「・・・そうだな。
あの話が本当なのだろうから、
それが原因で違和感を感じるんだろう?」
あの話と言われて一瞬「何だっけ?」となったが、あえて「転生者」であると言う事を口にしないよう配慮してくれたのだと、理解できた。
「多分そう・・・。
中々、慣れる訳ないもん。
武器屋って言ったけど、
刃の部分を潰した練習用って、
鍛冶屋じゃないんだね」
周囲の目もあるからではあるが、話の内容を買い物へと変えなければ、耳をダンボにして何かしらを「盗もう」としてる元同級生がいるのだ。
「あ~…リョータは確か記憶がないんだったな。
色々と教えながら案内しよう」
「ありがとー!」
団長はリョータを伴い、共通の門から街へと繰り出して行き、武器屋のあるエリアへと教えながら進んで行った。
* * * *
「リョータは街の武器屋や服屋、
鍛冶屋などの場所は把握できたのか?」
「一応、地図も貰ったけど、
街に出たら看板で何処が何かは理解できたよ?」
「そう言えば孤児として一度は孤児院に預けられ、
生活の基盤が整う前に冒険者として活動を始めたのか?」
「ううん。
その日の内にギルドに行って、
文字を覚えてるかを確認した直後に、
登録しちゃった」
確かにそうか、と団長は、気づかれては困る部分を伏せながら答えてくれるリョータに関心していた。
別の世界で生きていたであろう彼が、この世界の読み書きができなければ「記憶喪失」だと固定できる訳がない。
読み書きが出来るのであれば、記憶喪失だと言い続ける事も可能になり、冒険者となれば身分を問われる事なく活動ができるし、魔法や剣術は戦って行くうちに身に付ける事すら可能だろう。
武器屋近くの死角に身を潜め、問題児がリョータを殺すべく待ち構えている事にリョータだけは気づいていた。
うわぁ…馬鹿丸出しじゃん。
このまま気づかないフリしちゃえば、犯罪者として牢に入れられちゃうかな?
【(
仕方ないだろう?
あの問題児が「これから先も、何かしら事件を起こす」としか思えなんだもん。
そうなると被害を被るのは弱い立場の騎士志望の人たちだよ?
【(…そういう事ですか)】
リョータの考えを理解できた小桜は知らぬ顔で右横に付き、左から襲おうとしてる問題児を捕らえるつもりで構えてくれたのだった
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