第204話:模擬戦は…

 動き回る事を考えれば円形闘技場を模した形ではなく、広場の中央で戦う形となり、2名以外の生徒は左右に分かれて試合を見守る事となった。


 勿論、リョータが「完全勝利」すると判っているからではあるが、万が一の事を考え、助太刀できる体制を整えているようだ。


 あれま…同級生の「殆ど」が「俺が勝利」すると理解してるみたいだね。


 ただ、問題児あほうが「何かしらする可能性」が見受けられるからかね。


 「不測の事態」が起きれば即、動ける体制を取ってるや。


「リョータは練習用の剣を持ってないからな、

 両者とも木剣を使って戦って貰う」


「アイツが速攻で倒れるでしょうから構いませんよ」


 うわっ…自己中なのかね問題児くんは。


 逆にknockout(ノックアウト)されるって判ってないんだろうね。


 多分・・・いや、確実に「俺が動いた事さえ気づかない」可能性、ないかねぇ。


 騎士として動くなら従魔を控えさせる何て事をしない為、小桜は影にいる。


 リョータならば「例え従魔がいなくとも魔物に勝てる力」は持ってる訳で、問題児がAクラスの最下位を独走してるのなら、完膚かんぷなきまで叩きのめせばいいか、と思ってるのだ。


 ただ周囲の同級生は、問題児が負けると思って発言している。


「これ、

 勝負にすらならないんじゃないのか?」


「言うな。

 それ、俺も思った事だ」


「でもアイツは倒す気マンマンだぜ?」


「「「阿呆すぎる」」」


 リョータの怪我を心配する訳ではなく、問題児が倒され「それでも自意識過剰な態度でリョータに勝利した」とうそぶく様は容易に想像できる。


 ならば言葉で言うより体で理解してくれとばかりに


「リョータ、

 そいつの鼻をへし折っていいからな」


 とか


「あっという間に倒したとしても、

 そいつなら自分が勝利したと嘘をつく可能性があるから、

 謝罪するまて続けても大丈夫だぞ」


 などと問題児を怒らせる発言ばかりが飛び交う。


 すんげぇ言われようだな。


 まあ、そんだけの事を今まで、してきたんだろうから自業自と…あ、無いね得。


 団長が中央に立ち、左右に別れ木剣を構える。


「では試合を開始する…はじめ!」


 木と木がぶつかり合う音がして拮抗きっこうする…訳もなく、か~るくリョータは問題児が打ち下ろす木剣を避け、隙だらけな体に何度も木剣を打ち付けダメージを入れて行く。


「くっ…卑怯だぞ!

 正々堂々、手合わせしやがれっ!!」


「・・・してもいいけど大怪我するよ?」


 剣を持ってない方の左腕は、木剣が打ち付けられた跡が赤く浮き上がっている。


 問題児が「いくら剣術を速めた」としてもリョータの方が上で木剣を首筋に瞬間的に入れ、問題児の木剣すらをも抑えつけ勝負あり。


「・・・勝者…リョータ・・・」


 流石だと言う声と「とんでもない実力の持ち主だ」と言う声が上がっている。


「そんな、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!

 私が平民に負ける筈がない!

 貴様ぁぁぁぁ!

 如何様いかさまをし…

  「てないよ」

 なっ?!」


「してないね」「する訳ないね」


「してたとしても勝ってるね」


 如何様だと言われても騎士になるべく学ぶ同級生は、リョータの実力を見抜けており、恥をかいたのは問題児だった(当然、退学扱いになったとさ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る