第196話:ぐで~・・・

 名前すら付けられてない村で起きた黒死病を何とか抑え込む事に成功し、その手腕を発揮したのが10歳の子供でリョータと言う名である事は伏せられ、徐々に回復して社会復帰して行く村人が増えつつあると噂され始めた頃、リョータは自分の家を作った空間で庭先に設置したハンモックの上に横たわっていた。


 ぐで~…とした姿を見た小桜が何かしら言おうとして止めた。


 づ~が~れ~だ(疲れた)ぁ…。


 マジ冒険者して討伐する方が疲れないのにイレギュラーだよなぁ…あんな事。


 ハンモックに伏せた状態で揺られてはいるが、顔色は少しだが悪い。


 総勢20名(と言ってもリョータが担当した人数は1人くらい)を治療するのに奔走したからこそ、疲れていると何となく小桜も気づいている。


【一体、

 何をしたらそこまで疲れる事になるんですの?】


「ん~…とある村でペスト…

 黒死病と呼ばれる病気が蔓延しててな、

 異世界で開発された薬、

 もしくは光魔法しか救う手段が無くてね。

 流石に密閉空間とは言え、

 そう簡単に光魔法は使えないじゃん?」


【…まあ…そうですわね】


「だからさ、村で動ける人物で、

 しかも医療行為が出来る人にお願いするしかなくてねぇ。

 それが1人しかいないもんだからさ、

 1人だけ、俺が担当せざるを得なかったのよ」


【なっ?!】


「慎重に慎重を重ねてたけどね、

 手つきが流石に本職に叶う訳ないじゃん。

 だから1人でギブしたって訳。

 でもさ、注射器って言うのを作るのに魔力、

 結構つかったからかな、疲れちゃって…」


【周辺の魔物は弱いですから、

 少し眠って下さいまし】


 ありがと~小桜。


 ハンモックに揺られ瞳を閉じると5分くらいて寝息が聞こえて来る。


(神様?

 彼にこのような試練を与えましたの?)


『い、いや…そのような試練を与えてはおらん。

 おらんのだが…な…』


(はぁ…

  彼の巻き込まれ体質が、

  この試練を引き寄せたのですか)


『…済まぬな。

 リョータが望む事柄が可能になるのは、

 大人になってからだ。

 それまでは冒険者、騎士、魔法の勉強と、

 あらゆる事柄で事件が起きてしまうのじゃ』


(何て事)


『従魔たちでそやつを守ってくれ』


(…仕方ないですわね。判りましたわ)


 寝ていた筈のリョータは、神様と小桜の話が「聞こえて」おり、自分に付いてしまった「巻き込まれ体質」が今回、奔走したキッカケとなっていたと知り


「・・・マジか・・・」


 とボヤいてしまい、起きている事を知られてしまう。


『リョータ?!(あるじ!?)』


「あ~~~~しまった。

 寝たフリしとけば良かった」


【寝てませんでしたの?!

 確かに寝息が…】


「・・・フリだね。

 やっぱり巻き込まれ体質が原因だったんだ…」


 ぐで~…と脱力しつつも、大人になるまで巻き込まれてしまうんだと、腹を括るしかないようだ(せぬ)

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