第193話:治療開始(3)
過去、召喚されてしまった聖女…石塚と言う女性により看護医療に必要な物資を作り出すレシピは保管されているらしいのだが、見本として1人分しか残していないそうだ。
大至急、作れる場所に依頼し人数分を確保して貰う事にした。
「20人分…直ぐには無理だよね?」
「そう、ですね。
ですが手が足りませんし、
このままですと…」
「・・・僕の秘密を守ってくれるなら、
作れるよ?」
リョータはダンジョンで売り
それを魔法で「注射器用」に「加工」すれば人数分は作り出せると踏んだのだ。
確か検索した時、特効薬の名前はあったから、その1つを商店で検索すれば出るか?
万が一、置かれてないと判れば時間は掛かるが1人1人、光魔法で病原菌を直接、倒すしかねーな。
あの手この手を考え出すのは、リョータが「専門知識を持つ医者」ではないからだ。
皮下注射だったら…どうすりゃいい?!
自分で注射打つなんて、した事ねーぞ!?
リョータの懸念は「注射を正しく打てるか」ではある。
皮下注射であろうと点滴であろうと、注射針は「看護婦さん」に扱って貰うモノだと思っている。
それを「素人」の自分が扱えるのか?と言う不安が今更ながら襲っているのだ。
「リョータ様、
もしや注射に関して不安ですか?」
「・・・うん。
知識としては図案で見た事あるんだけど、
扱うなんてした事ないから…」
「ご心配なく、
感染を免れたカンゴ知識を持つ者が村にはおります」
「え…?もしかして、
石塚さまの縁戚者?」
「孫娘のマリー・イシヅカと申します。
祖母から感染には衛生面を気を付けなさいと、
教えられてますの。
予防に液体の治療薬を使う場合があるからと、
使い方の記録が残されておりますわ」
何たる事か、過去に異世界へと無理やり「来させられた」人物であろう女性が、将来、感染する病気が蔓延するかも知れないと考え、対処方法を書き残していたと言うのか?!と驚くリョータではあるが、薬を用意する必要があるため
「だったら治療、任せていい?
僕、薬を作らなきゃだから…」
と、作る事に専念したいと伝えた。
「ええ。注射器を扱える人物はわたくし1人だけど、
村が助かるのならフル稼働しますわ」
たった1人で20人もの患者を担当?いくら何でも無理だと思った。
「いくら何でも無理ですよ!
もしかしたら僕の全職業適性が役立つかも!」
そう…リョータは神様からチート能力とも言える、全ての職業適性を持っている。
自分は看護師だと思えば、もしかしたら扱えるかも知れないのだ。
「え?ぜ、全適正ですって?!
そんな稀(まれ)な人物がどうして冒険者なの!?」
いや、そう言われてもねぇ…。
扱い的には孤児だしぃ、あの領主からは養子に望まれちゃったしぃ、別にぃ何処かに囲われるような事にならなかったからぁ…って内心で言い訳をするが目下の目標はペストの完治。
「それを追求する暇があるの?
村の皆を助けるつもりなら、
追及するより完治を目指した方が、
いいと思うんだけどなぁ…」
そう伝えるとバツが悪そうな顔つきになり、準備を整えるべく、何処かへと向かって行ったマリーさんだった
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