第192話:治療開始(2)

 先ず、村長にお願いしたのは多くの人々を治療できる空間の確保。


 とは言え異世界あちらの病院のような施設がある訳なく、大人数を隔離する空間など皆無に近かった。


「すまぬな、

 この村には20名近くが入れる屋敷のような場所はないんじゃ」


「だったら此処はダンジョンの物資を補給する村だよね?

 20人くらいが入れるテント置いてない?」


 はた…とブラッドと村長が顔を見合わせた。


 そう、屋敷が無ければ代わりとして、テントを代用できるのではないか?と気づく事が出来たのだ。


「そうか!

 屋敷が無いなら屋敷のようなテントを使えば、

 20名くらい療養させる空間に使う事も出来る…

 と言う訳だな?!」


「うん。

 ダンジョンに行くって雑貨屋さんに伝えたら、

 冒険者ならテントは持っておけって、

 言われたの。

 その時に説明された中に、

 爵位を持つ人物が住むくらいのテント

 あるって聞いたんだ」


「それならあります!

 直ぐに広場に設置させて頂きます!」


「お願いします。

 ブラッドさんはアヴェルに戻って、

 この村が危機的状況になってるから、

 他の冒険者が寄り道しないよう、

 通達を出して欲しいって伝えに行ってくれる?」


「・・・此処を立ち入らないよう、する為だな?」


「うん。

 元々はネズミが菌を持ってて、

 ダニに移りダニが人に噛みついて菌を持ち、

 人から人へと空気で移って行く病気だからね。

 これ以上の感染者を増やさない為にも封鎖しなきゃなんだ」


「しかし…お前、

 何故そこまで詳しい?」


「・・・ギルドの図書で色々な本を読んだんだけど、

 ネズミが原因で病気が蔓延し、

 多くの人が犠牲になった…

 って書かれた本があったんだ」


 この情報は半分は嘘で半分は本当。


 リョータの知識が異世界の物である、と言うのを知られた時、転移だと思われる事を回避したいと思ったからではあった。


 本で知り得た事柄はネズミが原因ではなかったが、得体の知れない事柄が起き、多くの人が犠牲になった事があるとだけ記されていたのだ。


「そうだったんだな。

 良く覚えてたな」


「・・・かく

 僕は薬を調合しなきゃだから村長さんは、

 動ける人たちを集めて、

 動けない人をテントに誘導して下さい」


「判った。助けられるんだな?」


「うん…。

 でも道具が無いから…

 どうしたらいい?」


「どんな道具が必要だ?」


「んとね…」


 そう言うとリョータは注射器を描くと


「その絵柄が示すのはチュウシャキと呼ばれる物だろう?

 過去に召喚されたイシヅカ様が、

 伝えて下さった言葉だが、

 見本は残ってるぞ?」


「へっ?!

 武将と呼ばれた男性の他にも、

 異世界から来た人がいたの!?」


「ああ。

 聖女様だったがな、

 その方はニホンのヒロシマから戦争中に呼ばれたそうだ」


 ナンテコッタ(パンナコ…げふん)。


「もしかして…イシヅカ様と言う聖女様は…

 看護婦と言いませんでしたか?」


 そう聞くと驚いた顔になった事で、看護婦だった事が確定したのだ

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