第191話:治療開始(1)

 思い立ったが吉日、とばかりにリョータは、スマホ画面の「異世界商店」と題されたアプリをポチ…と押した。


 しかし異世界商店にあるのかねぇ…ペスト菌に対応しうる薬。


 検索して入手しようとした時、はた…と気づいた事があった。


「もしかしなくても…

 不可視の魔法を村全体に掛けたら、

 アヴェルに光が届かない可能性ない?

 説明かもん!」


【届かない確率は99%です。

 ですが菌に直接、

 光を当てる必要がありますので、

 建物内に患者を集めれば、

 光が漏れ出す可能性はなくなります】


 言われた瞬間、リョータは周囲の建物で、村人が集まれる場所はないか?と探してみたが、そう簡単にある訳もなく、やはり薬を購入して配る方が良さそうだと肩を落とす。


「・・・駄目か・・・」


「何が駄目だと判断したんだ?」


 気配を感じる事なく、リョータに声を掛けて来る人物がいるなど考えておらず、びくっ・・・と体を硬直させ、その場に尻もちをついてしまった。


「う、うわっ?!誰?」


「あぁ、すまんすまん、俺だ」


 地べたに座った状態で顔を上げて見れば、ブラッドが平然とした状態で立っていたのだ。


「ブ、ブラッドさん!?

 直ぐにタオルか服で口元を塞いで下さい!

 この村は黒死病におかされてるんです」


「は?こくしびょう…?何だそれ」


「とある国で何千万と死人を出した…

 細菌感染する病気で空気で移ってしまうんです」


「なっ?!数千万人も死人を出した…だと?」


 即座にブラッドは持っていた服の切れ端を口元に持って行った。


「うん。僕・・・対策方法しってるんだけど、

 この村にいる人、全員が入れるような建物、

 無さそうだから薬を作るしかなさそうだって意味で、

 駄目だって言ったんだ」


 流石に異世界から薬を入手する…などと言える訳もなく、秘密にするしか無いと踏み、「薬を購入する」と言うのではなく「薬を作る」と言ったのだ。


「か、完治できる薬を作れると言うのか?!」


「・・・作れるとは思う。

 思うけど…どれくらいの人が暮らしてるかなんて、

 判らないでしょ?」


「村に住んでる全員の数か…

 確かに間に合わなかった者もいるだろうしな」


「・・・助けられるんだったら助けたい。

 助けて欲しい。

 残ってる村人は20人くらいだ。

 申し遅れたが儂は村長で、

 動ける方なのでな」


 杖を使ってはいるものの、それほど重症化してなさげな村長からリョータに依頼が舞い込む。


「僕でいいの?

 10歳の子供が治療した…

 なんて知れ渡ったりしない?!」


 先ほどまではブラッドに対して大人びた言葉遣いだったのに、今は子供らしさが感じられる言葉づかい。


 ブラッドは戸惑いを感じたが、知ってる人物だからこそ、大人びた態度を取ったのだろうな、と考えてくれたらしく


「そいつに任せたとしても治療に奔走しただけだと、

 知らしめてくれるなら協力しよう」


 とリョータの負担を少しでも軽くさせるべく、発言をし、2人で治療に奔走する事となったのだった

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