第182話:恐怖の理由
アヴェルのギルマスからゲンコツを落とされた冒険者たちが、恐怖でガタガタと震え始め、逃げられる場所を視線だけで見定めようとしてるのだが、「そんな隙」は何処にも出来なかった。
「で?お前さんたちのパーティは、
そんな強いダンジョンに挑める程の実力も無ければ、
1人もSランクがいない状態で、
10枚もの依頼を受けるつもりかな?」
裏を返せばSが1人でもいれば挑む事が出来ると言っているようなもの。
リョータ1人ならば受ける事も出来るだろうが、リョータが挑むダンジョンを見ようとした瞬間に剥がした彼らが行ける訳ないとギルマスは睨みつけてるのだ。
うっひゃぁ~、これだけの威圧を受けて失禁しないって、どんだけだよ。
精神力だけは強いのか、ギルマスが放つ威圧に何とか耐えてるのだが、それも限界に達そうとしてる雰囲気をリョータは感じ取っていた。
「だ、だって子供でしょ?!
そんな子供がSランクのダンジョンに行ける訳ないでしょ!?」
行ける訳ないと断言されてるが、アヴェルのギルマスはSランクの猛者で、リョータが街道で起きたスタンピードを終息させたと「知っている」からこそ「にやり」と顔を歪めた。
「ほぉ…何故断言出来る?
まあ、お前たちは10カ所ものダンジョン…
それもS級ダンジョンに挑む、
と言うんだから達成して貰おうか」
10枚も剥がさなければ良かった…と言う顔になっているのだが、剥がした時点で依頼は受理されるらしく、彼らのギルドカードには10カ所のダンジョンアタックが開始されたと刻まれた(らしい)。
「い、いや…ちょっと待ってくれやギルマス。
いくらなんでも強制できねぇだろ?!」
「それは変だね。
僕が新人の時に聞いた話だと、
自分の1つ上までのランク依頼を剥がすだけで、
受理されるって聞いたよ?
受付に持って行くのは大丈夫か、
確認する意味もあるって教えて貰ったんだけどなぁ」
新人の時…と言われて顔面蒼白になったリーダー格の男性。
「嫌がらせで剥がしたなら懲罰対象だが、
お前らは強いからこそ10カ所も受けるんだろ?」
もう反論できない状態まで追い込まれ、持っていた10枚ものダンジョン依頼が床に落とされてしまう。
「ギルマス、落とした依頼書ってどうなるの?」
リョータの足元に、比較的ちかばのダンジョンの採集護衛依頼の紙片が落ちているのだ。
「あぁ、
それは拾ったら駄目だ。
こいつらが10枚もの依頼を剥がした事は間違いで、
レベルだけを見たと言わなければ拾えないんだ」
へぇ…そうなんだ。と言う顔でリョータは意地悪で剥がしたパーティーを見ているのだが、未だに謝罪する雰囲気すら漂ってない。
こいつら、謝罪する気・・・皆無だろ?
だったら俺は受付のお姉さんに推奨ダンジョンを教えて貰うか。
カード見せればランクも判るしレベルも判るからな。
阿呆どもが驚愕する顔でも拝むか。
腹黒い思惑を持ったままリョータは受付方面へと足を向けたのだった
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