第177話:閑話~アヴェル侯爵の勘違い後・・・(1)
フェンリルを従えた冒険者を手配し、自身の娘の幸福だけを叶えるつもりでいたアヴェル領主の元へ王家から手紙が届いた事が執事によって知らされる。
「旦那様、王家から手紙が届いております」
「もしや手配した子供が見つかり、
フェンリルを我が娘のペットに出来る…
と言う報告であろうか?」
「それは判り兼ねます」
執事は冒険者が使役した魔物を「欲しい」と望んではならない事を知っている為、微妙な表情を浮かべたのだ。
クリストファー・アヴェルは娘を溺愛するあまり、駄目だと言われた事ですら強引に進めてしまう傾向があるのだ。
望んではならないと諭した所で、聞き入れて貰えないと踏んで何も告げないのだ。
「読めばわかる事…か」
王家の封蝋が施された手紙をペーパーナイフで開封して行く。
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クリストファー・アヴェルに告ぐ。
貴殿が手配した事柄を即座に撤回せよ。
子供が使役した魔物を娘に望んだと聞くが、
それが何を意味してるのか考えたのだろうか?
冒険者が使役した魔物が
例え珍しく美しいフェンリルであろうと
欲しがってはならぬと法で定められておることを
忘れておらぬか?
手配を撤回し、手配書を回収せねば、
貴殿の爵位を伯爵に降格せねばならぬ事態となろう。
貴殿が手配した子供は手を出してはならぬ相手。
子供だからと侮ってはならぬ。
我が愚息がしでかした事柄を終息させた者でもある為、
自由を与えし冒険者である。
撤回が成されない場合、
貴殿の娘が我が愚息に嫁ぐ事は有り得ぬ事と捉えよ
ジャック・ファニー
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手紙を読み終えたクリストファーは顔面蒼白になったまま執事を呼び寄せる。
「・・・お呼びで御座いますか旦那様」
「大至急・・・大至急、手配書を回収して欲しい」
「我が領、王都、ティング、リッツェに手配を致しておりますが、
全てで御座いますか?」
自分が手配をしたにも関わらず真っ青な顔つきになり
「そうだ全てだ」
と手配は間違っていたと知らしめるべく執事に動いて貰ったのだ。
「・・・心得ました(今更か)」
そしてクリストファーは自身の娘を呼びつける事にした。
* * * *
「お呼びと伺いましたがお父様、
もしかしてフェンリルを連れた子供、
捕縛できたのですか?」
溺愛しすぎた故の失態…どう挽回するべきかを考えれば自ずと、娘を修道院へと向かわせるしかない、と心を鬼にする。
「お前が通行するための許可がいると言った少年は、
手出しをしてはならぬ相手であったのだ」
「どうしてですの?
わたくしは侯爵令嬢ですわ!
平民は爵位ある者に従うべきですのよ?!」
「・・・お前は何時から馬鹿になったのだ?」
「え?」
「領地に住まう者だとしても、
爵位を盾に強要してはならぬのだ。
まして相手は冒険者、
冒険者が使役した魔物を欲しい、
と望む事は法で許されておらぬ」
今、思い出したとでも言うのだろう。
ナタリーは顔色を悪くさせても尚、自身は悪くないと言い張る
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