第172話:閑話~届いた手紙を見て直ぐに手配

 王城便がギルドを介し、文官の手元へとリョータの手紙も届けられた。


「おや?これは街道で起きたスタンピードを解決して下さった少年ですね」


 王が直接、手紙を読む事は皆無(※)。


 その為、内容を宰相に確認して貰い報告して貰う事となっている。


 文官が宰相が執務をこなす部屋へと手紙を届ける。


「宰相様、リョータ殿より手紙が届いております」


「何か起きたのだろうか…」


「内容を確認しました所、

 どうやらアヴェル領主は、

 彼が使役したフェンリルを渡せと、

 言ったようです」


「何て事を・・・。

 冒険者が使役している魔物を欲しがる事は出来ないと、

 知っておろうに…」


「リョータ殿より、

 アヴェルで出された指名手配書を無効にして欲しいとの事」


 王都でも手配はされていたらしいのだが、彼の活躍が知られていた為、ティングとアヴェルに尋ね人として出されたようだ。


「早速、王様へ願い出に向かうとしよう」


「手紙をご確認の上、お願い致します」


 文官は他の手紙と共に宰相へとリョータの手紙を託し、自室へと戻って行った。



* * * *


 宰相は王様の執務室へと向かい、扉をノックした。


            コンコンコンコン


「入れ」


「失礼します」


 日々届けられる民からの要望に目を通す忙しい王様ではあるが、緊急性を伴う事柄から片付けているのだ。


「どうしたのだ?」


「実はリョータ殿がアヴェル領地で指名手配されているらしいのです」


「は?何故、そのような事になっておるのだ!

 彼はティングから王都に掛けての街道で、

 我が愚息が起こしてしまったスタンピードを終息してくれた少年だぞ!?」


「彼がアヴェルの領地で冒険者として活動しようと立ち寄った所、

 ダンジョンでの素材受け取りが主な為、

 ティングに向かうべく門へと向かったらしいのですが…、

 アヴェル領主の御息女様が彼の従魔を欲しがったそうです」


「何たる事を・・・」


「アヴェルで令嬢が手配をしたそうなのですが、

 彼は別の従魔を連れていた為、

 手配から逃れる事が出来たそうです。

 そしてティングで手配されているのに気付き、

 王都でも手配されている事を考え、

 手紙に託しアヴェル領主への通達を願い出ておられます」


 ふむ…と即座に何かをしたため始める王様。


 したためているのは勿論、アヴェル領主への忠告と手配書の撤回依頼。


 自由を勝ち取っているにも関わらず、アヴェルに行く事すら出来ない状態を解消すべく動いてくれたのだ。


「では宰相、これをアヴェル領主へ送って欲しい」


「御意」


 クリストファー・アヴェルに対する依頼…それは、リョータと言う冒険者に対する待遇を改めなければ爵位を1つ落とす事になると言う事と、手配書の撤回と手配は間違っていたのだと知らしめる通達。


 ダンジョンの管理も国が行っているのだが、ドロップしたアイテムなどの管理はアヴェルのギルド…それをも国が請け負う事とすると強めに通達を出したのだ。


 宰相が執務室から立ち去ったのを見計らって王は


「これで彼が自由に行き来できるようになれば良いが…」


 と少しの不安要素を口にしたのだが、それは杞憂に終わる事となるだろう


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(※)=個人的イメージです

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