第168話:引きこもり時々、冒険者

 百科事典なみの問題集を少しだけ読み、国語辞典なみの解答用紙に書かれた選択肢を選び出し、正味3日で課題を「終わらせる事」が出来てしまうあたり、流石である。


 問題集は戻さなくていいとは思うけど、返却って言われたら困るから机の引き出しに収納しておくか。


 解答の方は…2段目の引き出しに入れておけば問題ないな。


 ん~~~~っと伸びをして久方ぶりの勉強から解放され、冒険者としての活動を再開すべく、リッツェのギルドに向かう事にしたのだ。


 勉強してる間、影に控えていたゴマ、権太、琥珀、こむぎ、小桜は自由に遊んで貰っていた。


 保護したココは順調に育ってくれ、今はこむぎの背中で眠っている。


 みんな~俺はギルドに向かうけど、そのまま遊んでるか?


【わたくしは同行いたしますわ】


『僕は森で遊んでる~♪』[僕も~]


《私は新たな恵みを探してまいります》


{私も森でゆっくりしていたいです}


 それぞれの主張を聞き、一緒に行動する小桜と共にリッツェの門ちかくまで転移で飛ぶ。



* * * *


 門番が何処かに住居を構えてると、知っているリョータの姿を捉えると


「おう!リョータ、

 魔法学校でえらい目にあったんだってな?」


 と噂され始めた事を教えてくれた。


「うわぁ~。

 その話、結構な勢いで知られてたりします?」


「それは無いな。

 緘口令が敷かれてるらしくてな、

 門番たちの中でも秘匿事項だと通達されてる。

 今は誰も周囲にいないから聞いただけだ」


 あ、そう言う事。


「そうなんだぁ~、

 だったら内緒でお願いしますね。

 僕、処遇が決まるまでは冒険者としての経験を積みたいから」


「判ってるよ、

 お前くらいの強さなら大丈夫だと思うが、

 油断するなよ?」


「はぁ~い」


 何処までランクがバレてるか何て判る筈が無い。


 かと言って自分からバラすのは有り得ない。


 故に「油断大敵」は肝に銘じなければならないと心得てはいる。


 ギルドに到着すると早速、依頼ボードに目を向ける。


 ん~…。Sランクの依頼って…数えるくらいしかねぇじゃん。


 こうなると依頼を受けずにティングに転移して依頼を見るしかないか?


 まあ無かったら無かったでダンジョンに挑戦する事は可能だろう。


 以前、ダンジョンの街に行った時はランクFだしな。


 あれから2か月くらいしか経過してないのにSだと知られたら…驚かれるだろうなぁ。


 何にしても冒険者として活動したいのならティングに行くしかないだろうな、と腹を括り、1週間は冒険者1週間は引きこもり…と言う生活スタイルを確立すべく俺は、リッツェのギルドを後にし、アヴェル側の門を潜って名もなき村・・・そうグリフォン乗り場へと向かう事にしたのだった。


 しかしギルドにSランクの依頼が少ないのにブラッドさん、森に入って行ったよな?


 あれって…もしかしなくても指名依頼だったりするのかな?


 だとすれば俺Sだと周知されてしまったら指名依頼…され…ちゃう?!


 い~~~~や~~~~だぁああああああああ!


 それだけは避けたい!絶対に避けたいけど避けきれぬとかせぬ!

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