第148話:隠さざるを得ない真実

 人々から解放された俺はサブマスによって、執務室安全地帯へと連れて行って貰えた(マジ死ぬかと思った)。


「今まで大きな襲撃が無かったからと言って、

 アレは無いからな。

 リョータが無事に戻ってくれて良かったよ」


「サブマス助けてくれて有難う!」


「あぁ。

 そう言えば名乗って無かったな。

 カーターだ」


「カーターさん、

 みんなに説明したのは本当の事じゃないんだ」


「・・・どう言う事だ?」


「あの場には孤児院に向かった犯人を目撃した子供と、

 孤児院でシスターを見た子供がいたでしょ?」


「あ~…なるほどな。

 態々わざわざ恐怖を思い出させないよう、

 してくれたって事か」


「うん。

 僕は孤児院の惨状を見た訳じゃないから

 何とも言えないんだけど、

 あの子を見つけた時、

 誰も残ってないだろうなって思ってたから…」


 少しだけ早く起きて皆を驚かせようと、食堂に隠れていたから助かった少女。


 大人が話す内容が理解できないとしても、説明の場にいさせるのは酷だと判り切っているからこそ回避した。


「先ず、リッツェに襲来したモノは何だ?」


「ドラゴン王国から追放され、

 厄災のドラゴンと言う異名を持った逸れドラゴン」


「なっ?!」「何ですって!?」


 お茶を用意して俺とサブのいる執務室に入って来たケイトさんが、俺の報告に驚きを隠せず声を上げてしまった。


「・・・ケイト、

 聞いた言葉は全て秘匿事項となるからな?」


「は、はいっ…

 すみません失礼します」


 それ以上、聞かせたくないと思ったのだろう。

 

 カーターは執務室に防音魔法を掛ける判断を下した。


「これで漏れ出す事は無いだろう。

 しかし…厄災のドラゴンが、

 多くの人々に襲い掛かった理由は何だ?」


「どうもドラゴン王国に戻り王となりたかったみたいです」


「は?」


「ジャーチと言う仮の名を持ち、

 人に化ける事が出来るようになり、

 強さで支配するつもりだったみたい」


「…そんな…

 戦闘狂だったと言う事か」


「平和宣言だっけ?」


「あぁ、

 人とドラゴンの間で交わされた誓約は、

 互いに危険が起きない限り、

 干渉しないと宣言したからな」


「それが気にくわなかったみたいで、

 恨みを変な方向に向け、

 リッツェを襲撃しに来たみたい」


「緊急事態の知らせが無かった理由は?」


「門番さんたちが知らせる前に、

 殲滅されちゃったんだと思う」


「人に化けた状態で悲鳴を上げる事なく、

 連絡すら出来ないまま通られてしまった…?」


 Aランクの門番が簡単に通過を許してしまう程、強いドラゴンを倒してくれた事に感謝しか無い。


「見て無いから『そうです』と言えないよ?」


「確かにな。

 でも襲来したドラゴンにとどめを刺したのは?」


「サブマス以外、

 誰も聞いて無いですよね?」


「あぁ」


「・・・…僕です」


 説明ではワイバーンとドラゴンの王が倒したと聞いたのに、今、聞かされたのは10歳の子供が倒したと言う事実。


 鑑定を持って無いサブマスではあるが、彼が「とんでもなく強者だ」と言う事は理解できた(らしい)


「そう…か。

 街を救ってくれて有難うな」


「ううん、僕が勉強してる学校に襲来したから、

 対峙せざるを得なかったけどさ、

 ワイバーンとドラゴンさんに、

 何かあったら連絡をって言って貰えてなかったら無理だったよ?」


 あくまでも自分はBになったばかりだと「思わせたかった」リョータだったが、流石にドラゴンを倒してしまった事は紛れも無い事実として残る為、表面上ランクがSに上がることになりそうだ

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