第137話:多くの犠牲(2)
孤児院で生活していた女児たちの命は、リョータが駆けつける前に失われてしまった。
リョータは転移魔法を使う事は出来るのだが、この時は使う事を念頭に置かなかった。
遠目ので孤児院に鑑定(小)を掛けてみたのだが、生存者はいないと出てしまい、次に狙われるとすれば学校か?!と考えてしまった。
しかし
「シス・・・タ~・・・お姉…ちゃん…
みんな、へんじし・・・わぁ~んっ」
子供の声が聞こえ、生き残った子がいると判りゴマを呼び出し向かわせた。
『ご主人様、
子供は食堂に隠れていたみたいです』
言われた通り、食堂に入ると1人だけ、小さな子供と言っても5歳くらいの子が、泣きながら座っているのが見えた。
「大丈夫かい?」
膝を付き子供の目線まで体を低くして、傍のゴマに手を舐めててくれ、と頼むと怖かったのだろう。
リョータの顔を見た瞬間に抱き着いて来たのだ。
「わーーーーーーーーーーーーんっ」
「良く頑張ったね、
シスターもお姉ちゃんたちも…
いなくて不安だったろう?」
「ぐすんっ…うんっ…
みんな何処にもいなくてっ…
本当は皆を・・・驚かせようと隠れてた。
だけどっ…
シスターが…」
「思い出さなくていいよ」
優しく頭を撫でてやると、ようやく落ち着いてくれた。
「あたし…これからお兄ちゃんと一緒?」
この子をギルドに連れて行く暇はないかも知れないが、1人で行かせるのは不安だし、離れないだろうな。
「あぁ、安全な場所で待ってて欲しい。
お姉ちゃんたちを隠した悪い奴は追いかけて
わざわざ死んだ事を告げる必要は無い。
それに孤児院の生き残りは、彼女だけでは無い。
ギルドに連れて行けば、生き残った子もいるので安心感は増すだろうと踏んでいる。
彼女を抱き上げ、ゴマの背に乗せると
ゴマ、その子と一緒にギルドへ行くから傍にいてくれるか?
『ご主人様は?』
勿論、ギルドまでは一緒に行くけど学校が狙われる可能性がある。
町中を確認している冒険者たちにも、その事を伝えないとね。
学校への道に人々の遺体が放置された状態と化している事に、この時のリョータは気づけなかった。
気づけなかったのは、それだけでなく、犯人が人化したドラゴンであると言う詳細までは読み取れなかったのだ。
何とか…何とか犠牲をこれ以上、出さずに出来ればいいんだけど…。
この時、リョータは「考えた魔法が使えるようになる」と言う事を「綺麗に忘れ」てしまっており、転移を使って学校に戻る事「だけは」緊急事態を知らせる為だと割り切って使う事を決めた。
移動して襲撃者を知るまでに魔法を作る事すら忘れて対峙せざるを得ない状態になるとは、思いもしてなかった
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