第132話:逸れドラゴン襲撃計画

 とある山奥の更に奥地にある洞窟の中、ドラゴンが治めている地域から追放された粗暴な1匹が、自分が追放された事に対し不服があり、何とかして自分が強く支配できるかを見せつけようと計画を立てていた。


「オレが…オレが追放された理由が未だに判らん。

 だが強く支配する能力が高いのだと、

 知らしめる事に成功さえすれば、

 王にすらなれる可能性があるだろう」


 このドラゴン…どうやら追放された理由が理解できてないようで、追放したドラゴンの王に一矢報いようとしているのだ。


 が、追放理由は至って簡単・・・好戦的すぎるのだ。


 ひと昔前まではドラゴンは最強で討伐対象にすらならない存在ではあった。


 だが、冒険者と言う職業が生まれ徐々に猛者が現れ、ドラゴンが討伐対象になり、多くの犠牲が出てしまい、人の国とドラゴンの国とで大きな争いにまで発展してしまった。


 それを平和的に解決したのが一代前の王。


 討伐対象から外して貰う代わりに何かあれば互いに協力する、と言う契約を交わし現在に至っているのだ。


「くそっ…

 オレは誰もいない所に追いやられる身じゃない!

 こうなったら何処か…

 子供しかいない場所が確かあるじゃないか」


 ニヤリ・・・と顔を歪めたドラゴンがターゲットとして選んだのは、リョータたちがいる学校。


 ドラゴンが襲撃したら例え剣術や魔法を極めた先生たちがいたとしても、何人かは蹂躙されてしまうのは明白だと高を括っているのだ。


 リョータ1人で対峙する事になるのだが、それでも死闘となるだろう。


 相手は人の10倍以上も体躯があるドラゴン…。


 協力的なワイバーンやドラゴンが駆けつけてくれるまで持つか否か。


 このドラゴンは強さは誰にも負ける事が無いのだ。


「そうなれば奇襲が一番よいな」


 人の姿に化ける事が出来るようになった彼・・・ジャーチと言う仮の名を作り出し、情報は入手していたのだ。


「そうなれば、

 子供だけが学校とやらにいる時、

 襲撃するのが一番だな」


 先生が不在にする事など本来なら有り得ないのだが、1日だけ…剣術学校の教師と魔法学校の教師がいなくなる日が存在するのだ。


「それを実行するのは1週間後か…

 ならば近くの村まで移動しておこう」


 1週間後に王城で行われる、定期発表会。


 それこそが教師がいなくなる要因なのだ。


 定期発表会とは剣術と魔法の生徒で才能を見出した者がいれば報告する、と言う事を行っており、更には新たな魔法を生み出したり魔法陣を生み出した生徒を両学校で共有すると言う事も兼ねていた。


 ドラゴンのままでは移動が出来ない為に生み出した人化。


 それならば他のドラゴンが見たとしても「人」として見逃してしまう。


 だからこそ移動には人として動く方が、彼にとって安全とも言えるのだ。


「くくくっ…オレを馬鹿にして追放した王家に、

 一矢報いる事が出来るのなら、

 僥倖ぎょうこう

 強さを誇示できるのであれば、

 例え人々が死したとしても構わぬわ」


 じわり…じわりとリッツェに危機が近づいているのだが、現時点ではぐれドラゴンの脅威に気付いている人物は、皆無なのだ

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