第126話:糾弾(1)

 記憶が無いと聞かされても、リョータが下級生で年下は変わらない為か、怒りを治める事が出来ない。


 右手をリョータに向けかざし、詠唱を始めたのだ。


「稲妻よ…彼奴きゃつに目掛けて降り注げ!」


 翳した瞬間、ジェームスはリョータに防御の魔法を掛け、雷を受け止めるべく、彼とリョータの間に身をするりと滑り込ませ魔法解除を試みる。


魔法解除キャンセル


 放たれたであろう雷はリョータに届く事なく解除され、教師がAを睨むように見つめた。


「え…えっ…?どう…して…先生が…」


 そこで、ようやく教師の存在に気付いた。


「・・・何故…は私の台詞セリフだが?」


「え・・・?」


「どうして下級生の自室に君が入っているのかね?」


 ジェームスは、理由を知っているからこそ、嘘を吐いてるか否か理解できる。


「じ、自習時間に部屋が空きっぱなしなのは…

 危険だと思いましてっ…」


「・・・それにしては随分、散らかっているな…。

 リョータと呼ばせて貰うが君は部屋を散らかしたのか?」


「ううん、ちゃんと綺麗にして出かけたよ?」


「き、きっと泥棒がっ・・・」


「盗まれて困るモノなんて置いてないけど?」


「じゅ、従魔がっ…

 「小桜たちは影に控えて貰ってるから散らかせないよ?」

 うぐっ」


 何とかして自分が探し物をしていたと「誤魔化」そうとしたのだが、リョータが的確な答えを返すものだから、追い詰められていた。


「お前は他人の部屋で何をしてたのだ?」


 目は挙動不審に動かし、素知らぬフリで乗り切ろうとしているが、ガタガタと震え、自分が何かしたと白状しているに等しかった。


「これ…被害を申し出たら、

 散らかした人ってどうなるんですか?」


 日本で言えば不法侵入。


 それを訴え出れば確実に処罰対象だ。


 だが異世界こちらでの処遇をリョータは知らない。


「まずは今いるクラスからの降格、

 冒険者として登録してるなら冒険者ランクも降格、

 あとは1か月、魔道具で魔法を使えなくされるかな」


 魔法を使えない…と聞かされたA。


 サーっと血の気が引いて行くのが2人にも見て取れた。


(顔色で白状してるようなものなのに、

 何も言わないつもりでしょうか?)


 小声でジェームスと会話を始めたリョータ。


 何が起きても守る体制だけは取っている。


(君の従魔が持って来た道具に証拠はあるから、

 嘘を吐いても無駄だと判って無いだろう?)


(あ~…そうですね)


「先輩・・・?

 僕の部屋で何してたんですか?」


「・・・様を・・・」


如何様いかさまじゃないって言いましたよね?

 ゴブリンキングを瞬殺してますけど、

 信じられないなら討伐する所みます?」


 ゴブリンキングを瞬殺…と言われ目を見開いたA。


 ジェームスは王都に押し寄せつつあった、ゴブリン集団の討伐に駆り出されていた。


 リョータが剣を使って一刀両断した姿目撃してる。


 だから彼が如何様をしてないと断言できるのだ。


「くっ…」


「そうそう、何かの変異種…

 鬼人ってSSの魔物倒しちゃったけど?」


「「はぁ?!」」


 うん…2人、同時に驚くとは思ってたけど予想通りだね。


「ちょっと魔法が強すぎて魔核は壊れちゃってるけど…」


 マジックバッグ(エコバッグ)から2等分されてしまった魔核を取り出し、

先生に見せた。


 ジェームスは鑑定を持っているのだろう。


 即座に「それ」が鬼人の魔核だと、理解できた

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