第125話:教師の驚き

 魔道具をマジックバッグに入れ、琥珀に持たせると器用に木と木の間を飛んで行き、最短ルートで職員室に向かってくれた。


 琥珀はキョロキョロと周囲を見回し、魔法の先生を探した。


<恐らくご主人様と同じ衣装を纏っておられる筈・・・>


 視線だけを動かし、リョータが纏っていた衣装と同じ人物を探し、彼の元へと近づいた。


「・・・ん?!見た事はない生き物だが…

 この首輪は従魔の…?何を持っている?」


 教師ジェームス・トンプソンは、琥珀が持つバッグに気付き受け取った。


 すると、中から出した魔道具が「勝手に再生」し始め、映像が壁面に映し出される。


「なっ、何だ?!」


 映し出された映像には「リョータの自室」と、解説付きで表示されていた。


「リョータ…?

 ああ、ワイバーンの棘を抜き、

 生徒に閉じ込められた子供か」


 次に映し出されたのは上級生の姿。


「何故…彼の部屋にAが…?」


『何処かに…何処かに凄さの秘密があるんじゃないのか?』


 ガサガサと家探ししてる姿が映し出され、彼のクラスを担当する先生、その姿に驚愕した。


「何故Aが…」


 本棚に収納されているのは学校から支給された本で、背表紙を持った状態を維持し、捲る方を下にして振っては元に戻しを繰り返す。


 全てを確認し終えると次は…とばかりに、洋服が収納されてるクローゼットに向かう。


 掛けられてる服を全部、取り出してはポケットをひっくり返し、中に何か入って無いかを見てる様子に呆れ始めた。


「一体なにを探してるんだ?」


 Aが探してるのは「如何様いかさま」の証拠。


 ある訳の無いモノを探してるのだ。


「これだけ探しても強い秘密が無いのは有り得ない…」


 粗方の品をひっくり返して部屋は散乱状態。


 そこへリョータが戻って来た映像が残されている。


「何か…何かあ・・・

 「僕の部屋で何してるの?先輩」

 え…」


 ようやく従魔が道具を持って来てくれた意味に気付いたジェームスは、リョータの自室近くへと転移した。



 * * * *


 到着したジェームスの耳にも彼が叫んでいる声が届いた。


「許せないんだよっ!!

 お前のような子供が先生に一目置かれ、

 成績すら優秀で…大魔術師になるだろう…

 などと噂されるのは、

 お前じゃなくて俺なんだよ!!」


 噂された相手が子供だった事が許せないと、吐露する上級生にジェームスは、頭を抱えてしまいたくなった。


(何て馬鹿な事をしでかしたんだ。

 大魔術師になりたいのなら努力すれば良いものを・・・)


「だからって僕の部屋を荒らす理由にはならないよね?」


「お前がっ…お前が強い理由は

 如何様いかさまをしてるからだろ?!」


「してないけど?」


「魔法の基礎すら学んで無い癖にっ…

 何でを使えるんだよ!!」


 ワイバーンとドラゴンが襲来した時、アンソニーが放った魔法が暴走すると気付き、咄嗟に考え出した魔法「防御シールド」を発動させた。


 彼が疑いを掛けた理由でもあるのだが、説明なんて出来る訳が無い。


「上位だなんて知らないよ。

 僕は記憶が無いから…

 守りたいと思った瞬間に発動してたんだもん」


 半分は嘘で半分は本当。


 リョータの「思っただけで魔法が作れる」能力を使っただけの事なのだが、Aにとっては「それが如何様いかさまだ」と言いたいのだ

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