第119話:置き去りにされた者(マッシュside)

 マッシュ親子だけが残された広場…そこには重々しい空気「しか」流れていない。


「・・・全く、何をどうしたら違う方に解釈するのだ」


「一番になれと…言われましたので…

 何でも1位になるべく・・・行動したまでです」


「だからと言って基本を忘れる馬鹿が何処にいる」


「うぐっ‥‥」


「・・・お前が不許可になった魔法陣を見せなさい」


 3種の魔法陣が書かれている筈の紙には1枚だけ魔法陣が描かれているだけだった。


 しかも、その魔法陣は単純すぎて誰もが解除しようとすれば出来る程、安易な図案なのだ。


「3種…思いつかなかったからと言って、

 白紙を出すとは…馬鹿すぎる」


 自分で考えた魔法陣にダメ出しをされて意気消沈のマッシュではあるが、それは自信満々で作った図案。


「ですがっ…ですが私は、

 それが最高の出来だと自負してお

 「馬鹿者め」

 …え?!」


「このような単純明快な魔法陣では、

 敵が見た瞬間に破り、

 被害をこうむる未来しかないのだぞ」


「はぁ?!」


「最高だと言ったな?」


「は、はい」


「地面に描いてみよ」


 地面に自分では最高の出来だと思っている魔法陣を描いてみたのだが、書いて直ぐ、穴がある事に気付いた。


「・・・これでは攻撃されてしまいます」


「理解できたな?

 ならば最高の出来だと言う自信は何からだ?」


「・・・今まで1位にいたから・・・

 魔法陣を書いても優秀だと…思ってました」


「退学処分を出してくれた学校に感謝するしかないな。

 お前は魔法学校ではなく、普通学校へ、

 再入試を受けさせる事にする」


「そんな!!」


「こんな単純な魔法陣しか思いつかないのだ。

 魔法以外の事柄を学ばせるしかない」


 落ち込んでいるマッシュの首根っこを捕まえて転移魔法陣を描き、屋敷へと戻って行った。



 * * * *


 屋敷に戻って母親にも、学校で起きた事を伝えると、伝えた事柄を聞いてみた。


「呆れた…我が家の1番手になりさい、

 と言ったのを聞かなかったのですか?」


「・・・聞いたと・・・思うのですが・・・」


「そうよねぇ…聞いておきながら右から左に聞き流したのでしょう。

 学校で被害者は出なかったのですよね?」


「あぁ、9月に入学したリョータと呼ばれる生徒が防いでくれた」


「その子の未来が楽しみですわね。

 学校の校舎には被害を残し、

 生徒に被害を出さないなど、

 高度な魔法を駆使して下さったのね」


 はぁ…と自分の息子ながらも溜息しか出ない母。


 父も又、愚息と化してしまった息子の再教育をどうすべきか?悩む事となる。


「母上…」


「何です?愚息」


「うぐっ…私が入学する時に掛けて下さった言葉を今一度、

 教えて下さいませんか?」


「今更知って、どうするのです?

 魔法学校を退学処分されても尚、

 魔法剣士を目指すとしても、

 基礎すら学べませんのに…」


 例え教えたとしても同じ事の繰り返しにしかならないと、母は気づいていた。


「・・・」


「自室にて暫くは謹慎していなさい」


 父親から謹慎を命じられてしまったマッシュは、トボトボと自室へと戻るしかなくなったのだ

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