第118話:事の顛末(3)
「さて、マッシュ…
君はこの事態を起こした事を理解しているのかね?」
招集を掛けた教師がマッシュを睨みながら尋ねる。
「起こした事・・・?」
全く気付いて無いからタチが悪い。
「君は何をした?」
「・・・なにも・・・」
「先生、そいつは何も答えませんよ」
「・・・どれだけの事をしたかすら白状しないと?」
「えぇ。
例え対戦試合を行ったとしても、
彼は僕を殺す事に特化した魔法を使うでしょう」
「何だと?!」「うっ・・・」
リョータに気付かれてしまっている事が信じられないのだが、それ以上に父親からの威圧に耐えられなかった。
「何が何でも1番でなければ気が済まない・・・
だからこそ僕が1番に躍り出て来た事が許せないんだと思います」
「何と…何と馬鹿な息子だ。
学校とは競争する場所では無いのだぞ。
知らない事を学び、身に付ける為の場所…
それすら履き違えるとは…」
「ぐっ・・・」
「しかも学んだ事を悪意に使うとは…馬鹿だろう」
上級生からも馬鹿だと言われ、追い詰められて行くマッシュ。
「多分、僕の部屋に展開した魔法陣…
許可が下りなかった魔法陣を使ったと思うよ?」
「なっ!?(何故そこまで判るんだ?!)」
「・・・何故そこまで理解できるか判って無いみたいだけど、
他の人が監禁されても気づくと思うよ?」
「そうだな…
私でも監禁されたと判った時点で、
魔法陣が却下されたモノだと判るだろう」
先生が同意すれば
「わたくしも気づいたと思いますわ」
同級生を代表して女性が答え
「俺でも判るだろうな」
と上級生すら同意したのだ。
「くそぉーーーーーーーーーっ!!」
苦し紛れに攻撃魔法をリョータに放つが
「
考えただけで魔法を覚えてしまう能力を使い、
勿論、周囲への被害を出さない工夫は成された状態で発動させた。
「「「凄い!」」」
「・・・馬鹿なの?
僕だけを攻撃したつもりだろうけど、
防がれた時の事、考えなかったでしょ」
「うぅ…」
「お前は何を学校で学んで来たのだ?
他人を傷つける為に魔法を習いに来たのか?
それとも魔法を習得し、
魔法剣士として活躍する為に来たのか?!」
「私はっ…私は魔法剣士になりたくて…」
「僕が守らなかったら、
ここにいた全員が怪我を負ってたよ?
それで良く魔法剣士になりたいなんて断言できるね」
そう…リョータが
「え…?」
ようやく周囲の状況に目を向けたマッシュは、真っ青な顔色になった。
リョータの防御に守られていない学校の壁は、攻撃を受けたかの如く黒く変色しているのだ。
「そんな…馬鹿な…私の魔法が…暴走…?」
「怒りに任せて放てば、そうなるよ?
僕より先に入学してたんだから、
危険性は勉強してる筈・・・
ですよね?」
「あぁ、魔法を扱う際の危険性は説明して、
冷静に放たなければ暴走すると教えた筈だが・・・」
何もかも1番であろうとしたが故の弊害・・・重要な事柄を肝に銘じなかった事が今回の原因であった。
「マッシュ・ホワイト、
君は学校に危害を加えてしまったと言う事で退学となる。
荷物を纏めて領地に戻りなさい。
リョータもワイバーンに助けを求めた事は理解できるが、
事を大きくしてしまった責任は負って貰う」
「はい」
辛辣な言葉を掛けられ動く事も出来ないマッシュを残し、集まっていた生徒たちは、それぞれ部屋へと戻って行き、リョータの罰は数日間の謹慎となった
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