第111話:懐くワイバーン?

 棘を抜いてくれと訴えるワイバーンは1匹なのだが、付き添いなのか数匹のワイバーンも飛来している様子。


(ねぇ、他のワイバーンも怪我してるの?)


〖いいえ、他の個体は興味本位です〗


(だったら縄張りに戻って欲しいんだけど…)


〖…聞き入れて貰えそうもないんだ〗


(もしかしなくてもワイバーンの王様?)


〖いや、そう言う身分では無いが束ねる者ではあるな〗


(じゃあ上空で待機して欲しいと願う事は可能?)


〖それならば…(上空で待機せよ)〗{はっ!}


 何とか5匹のワイバーンが広場に降り立つ事を阻止できたリョータ。


 深々と刺さってしまっている棘を魔法で引き抜いて行き、軽く回復魔法も使った。


(・・・ふぅ…何とか取れたから戻ってくれるよね?)


〖おぉ!そうか、こんなに早く抜けるのであれば、

 そなたの魔力を感じた時に来れば良かった〗


 ん?今…何て言った?魔力を感じた時って言ったよね?!


【…言いましたわね】


(あの…つかぬ事を聞きますが、

 俺の魔力を感じたのって…)


〖そうだな…5か月程前になるか。

 リッツの森奥に大きな魔力が発せられた事に気付いたのは…〗


 ちーん♪確定だね。


あるじ…】


 まさか俺が、この世界に転生した瞬間に気付いてたとは…ね。


〖どうしたのだ?〗


(ううん。何でもない)


 怪我をしていたワイバーンはリョータに感謝の意味を込めてスリスリ…すり寄っている。


 その光景を見た生徒たちは


「ワイバーンに懐かれてる…」


 と言う意見で一致していた。


(てかさ、何スリスリしてるのさ)


〖あぁ。そなたに何かあれば、

 我らワイバーンが手を貸す為のマーキングだな〗


 懐いてんじゃなくてマーキングされたのかよ…。


 まあ何かあれば強いと聞いた事があるワイバーンが、手を貸してくれるなら有難いけどさ。


 怪我をしたワイバーンは空へと戻り、残りの4匹を引き連れて縄張りへと戻って行った。


 学校内で掛けられた招集は解かれ、それぞれの授業が再開されるのだが、リョータに対する偏見の目は尊敬の目に変わったのは言うまでもない。



 * * * *


(あの1年生だろ?ワイバーンが懐いたっての)


(そうみたいだ。

 何かワイバーンの言葉を理解している雰囲気もあったって話だぜ)


 戻る最中、聞こえて来た言葉にリョータは顔を顰めるしかなかった。


 何か…違う意味で目立っちまったね。


【それは致し方無いかと思いますわ。

 わたくしを引き連れている時点でも目立ってますわよ?】


 …そうでした。


 一緒にいるのはフェンリルで、討伐対象となり得る「魔物」だと言う事を忘れていた。


 そんなフェンリルを従魔として引き連れている時点で「目立って」いるのだ。


 魔法陣の提出は後日に延期となったのは仕方ないだろう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る