第102話:図鑑で知る薬草

 図書館の建物に入って見えたのは、借りる為の空間と通路、そして読む為の空間「以外」は図書で埋め尽くされた光景。


 こういう広い図書館って司書の人がいそうだけど…受付で図鑑があるか聞くか。


「すみません、薬草を知りたいので図鑑は何処にありますか?」


 受付の「オネエ」さん…こっちにもいたのか、と言う衝撃は、それ程なかったが…


「あらぁ~、可愛らしい子ねぇ…

 薬草図鑑なら1階後方左側3列目上段にあるわ。

 届かない場所だから魔法で降ろして頂戴。

 魔法操作が難しい時は、

 傍に上る為の階段が置いてあるから、

 それを使ってね」


 とウインク付きで言われ悪寒がしてしまったのは御愛嬌ごあいきょう


「あ、ありがとうございます」


 まさか異世界に「オネエ」さんがいると思わなかった。


 それにしても流石司書。


 膨大な棚に何が置かれているかを把握してるもんな。


 図書館は3階建てらしく、各階に受付があって貸し借りが出来るんだろう。


 図鑑類は1階…俺の背中側に6列ある棚の一番左…その一番上にあるらしい。


 届かない図書を取る手段として、風魔法を使う人が大半で、俺も魔法操作を学んでいれば使ったんだけど、流石に勉強して無い状態で無尽蔵に魔法を使って目立ちたくない。


 そう思って、目的の場所まで行き、階段…と言っていたのは梯子だと気付き、これなら慣れてるな…と昇る前に場所を把握すべく顔を上げて本の背表紙を探し始めた。


 えっとぉ…魔物図鑑に歴史図書、乗り物の歴史・・・って必要なんかね?


 雑草図鑑に動物図鑑…ようやく目的の薬草図鑑を見つけ、そこまで梯子を移動させ、昇って行く。


 棚の高さ的には8段くらい…1段が日本で言う所の百科事典くらいの高さ。


 俺が探していた図鑑は、日本で販売されてるラノベと呼ばれる本より少し大きいくらいだった。


 これなら子供でも持てそうだな、と思い、手にしたのだが


「重っ…」


 その声に気付いたんだろう、横にいたエルフのお兄さんが、魔法を使って取ってくれた。


「これを読むんだね?」


「あ、ありがとうございます。助かりました」


「薬草か…

 知っているのと知らないとでは

 雲泥の差だから知識として持ってた方が安心だね」


 梯子から降りた俺に手渡してくれるエルフの男性は、何処かに務めているのか独特の衣装を纏っている。


「うん、

 うっかり毒草を使ったりしたくなかったから、

 勉強したくてリッツェで聞いたら、

 ここならあるよって…」


「そうか…今年の9月に入学予定かな?」


「はい!」


「魔術でも剣術でも、

 鍛錬すれば必ず結果が付いてくるから、

 頑張りなさい」


「はい!!」


 思わぬ所で激励をして貰った俺は、読むスペースに図鑑を持って行き、薬草の種類を把握する事となった。


 ここは印刷技術が発展してるのか?と思ったのは後の事、その時は気づきもしなかった

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