第99話:グリフォンに乗るのは決まったが…

 支払いは騎乗する前に終わらせていて、戻る時には支払い済みでリョータを乗せてくれたグリフォンに再び乗れるように札を持たされた。


「この札は往復利用を示す札で、

 同じグリフォンに乗る事をも意味しているから

 なくすなよ?」


「判ったぁ」


 直ぐに偽装しているマジックバッグに収納し、何時でも離陸可能な状態。


「マジックバッグまで持ってやがる…」


「(何だ?この言い方…)持ってたら駄目だったんだ、

 ごめんなさい」


 冒険者なら持ってるのが当たり前な筈なんだが、とげがある言い方しやがったな。


 いかにも持ってる事に罪悪感を持っています、とばかりに見せかけたリョータだったが、もう1人の管理者がマジックバッグに嫌悪を見せた男性にゲンコツを落とした。


        ガツッ!


「いってっ!何しやが…」


 ゲンコツを落とされた者(彼をAとする)がゲンコツを落とした者(彼をBとする)を睨みつけようとしたのだが、Bの顔が明らかに怒りを帯びており、戸惑いを隠せないでいた。


「何するだと?

 冒険者がマジックバッグを持つのは当たり前だと、

 何度、言えば理解するんだ?

 それに相手が子供だと馬鹿にした態度をしていたよな?」


 そう言われたAは途端に震え出した。


「い、いや…あの…その…」


 突然始まった説教に気付いたリョータは騎乗準備…では無く、自分を乗せる事になったグリフォンの羽を丁寧に撫で背中を撫でと愛で始めた。


(ん~…こりゃ長く掛かりそうだから、

 君の毛づくろいと言うか羽を撫でていいかな?)


”そこでは無い、もっと尾っぽの方を頼む。

 我では届かぬのでな”


 え…?もしかしなくてもグリフォンさんの声?!


”うむ我に名は無いが「さん」を付けずとも良い。

 あやつらの、やりとりは通常営業と言うやつじゃ”


 「彼」が言う届かない場所を指先を使って丁寧に撫でつけると、気持ちよさそうに瞳が閉じられた。


 はぁ…普通、客を待たせて説教とかしない筈なんだけどねぇ。


”そなたは異世界から落とされた者でありながら、

 こちらの世界に順応しておるようじゃな”


 ふぇ?!な、な、何で気づいたの!?


”我の声に反応しておる時点で普通ではあるまい?”


 あうっ!そう…でした。


”資金は払っておるし、

 戻る時の札も持っておるのだから、

 背に乗るが良い”


 え?勝手に出発しちゃうって言うの?!怒られたりしない?


”そなたを怒る事など有り得ぬぞ。

 彼奴きゃつ等が客を放置しておるのだからな。

 待ちきれずグリフォンが勝手に飛行しても文句は言わぬであろう”


 うわぁ~…凄い言われようだけど、行かないと夕方になるよね?


”そうじゃな、

 急げば乗り物に酔うてしまうであろうから、

 普通に飛べば王都に付くのは夜じゃな”


 じゃあ、お願いしてもいい?


”了解した”


 目の前で言い争いが続いているのだが、リョータを乗せる事になったグリフォンが意思を持ち単独判断をし、リョータが背に乗ったのを確認して飛び立ち、子供とグリフォンがいない事に気付くのは周囲が暗くなったと理解した時となる

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