第98話:憧れのグリフォン
忘れ去られた村・・・名前も消えてしまった村・・・そこには交通手段として使役されたグリフォンを管理する人員だけが生活している様子が伺えた。
まるで日本の限界集落…人々が暮らしていただろう家屋には雑草が伸び放題。
中には朽ちかけている家屋すらあった。
(どれだけ長い時間が経過したら、こうなるんだろうな)
ただ、グリフォンを世話する人々が暮らす家屋は比較的、綺麗な状態が保たれているようだった。
恐らくテイマーが交通手段として使役し金銭を受け取る事で、生活資金や彼らの餌代を捻出しているのだろう。
小桜から降り村に近づけば、グリフォンたちの体躯が目に飛び込んで来る。
あ…ああ…憧れの…小説でしか名前を見た事が無かった魔物が…目の前に…。
鷲(あるいは鷹)の翼と上半身、ライオンの下半身を持った魔物…それが目の前に5頭…この場合は5羽が正しいのだろうか?
キラキラと目を輝かせながら近づくリョータ。
この時、小桜を影に控えさせる事を忘れていると気付いてなかった。
「ん?グリフォンで移動を希望した者か?」
大人しく座っているフェンリルに、世話を任せている人たちも気づく事はなかった。
「は、はい!王都まで行きたいのですが…
この子たちは片道ですか?」
食いつきそうな勢いで聞くものだから、世話係の者は若干いや、かなり引き気味で答えを返した。
「お、おう・・・片道でも構わんが往復も可能だぞ」
グリフォンに餌を手から与えていた管理者が、乗りたくて仕方がないと言わんばかりのリョータに驚きながらも答えてくれる。
「王都に乗り場…あったんだ…」
リョータが気づく訳もないのは仕方ない事、彼はオークを討伐し王都を堪能する間もなく移動してしまったからではある。
「どうする?」
「片道いくらですか?」
一番の懸念は金額。
今までが「安すぎる」くらいに安かった為、移動に使う魔物の価値が判らない。
「銀貨1枚だ」
…安くない?1000円でいいとか…有難いけどさぁ…。
「じゃあ往復で!」
大奮発しちゃえ!とばかりに持っている銀貨9枚の内、2枚も消耗させてしまう。
かなりの大金であるはずの銀貨を使ってしまう子供に目を点にさせたのは管理をしている者たち。
(え…?こんな子供が銀貨を容易く使うだと?!)
(子供ながらに苦労して稼いだんだな)
この二通りが内心の声ではあった。
「じゃ、じゃあ選ぶから少し待ってろ」
「はーい!」
王都にもグリフォンはいるのだが、同じグリフォンで行き来して貰った方が効率がいいらしい。
王都往復…何日滞在するかも判らない状態で送り出すのだから、吟味すべきなのは理解していた。
待つことが出来、子供を乗せても暴れないグリフォン…。
ようやく該当するグリフォンを見つけたのだろう、乗り場へと誘導してる様子が垣間見えた。
「名前聞いてないが、こっちに来てくれ」
「はーい」
乗り場らしき場所は子供が乗る場合に使う場所だと言う。
そこからグリフォンの背に乗せられる事になった。
「一応、子供用の鞍を付けたが落ちないよう、
しっかり手綱は持ってくれよ?」
「はい」
一瞬「うん」と答えようかと思ったが、真剣だと判って貰わなければ、乗る事すら却下されると考え、しっかり聞いて守る意思を見せる事にした
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