第87話:依頼書の不備を指摘

 気付いた事、それは…


「この依頼書に本数が書かれて無いけど、

 マジックバッグに入るくらいで良いの?」


 本数。本来なら何本ほど伐採して下さい…と書かれていなければならないのに、持って来た依頼に本数は一切、書かれていないのだ。


「あら、嫌だわ…本数の記入わすれね。

 少し待っててくれるかしら?」


「はーい」


 恐らくティング同様、依頼を出したのは商業ギルドの木工部門。


 1本で良いのか50なのか判らないまま伐採に行ってしまい、切り過ぎて持て余す状態になるのだけは避けなければならないと思ったのだ。


 いくら俺が欲しいと言っても、際限なく使ったりしたらバレるもんな…。


 長く掛かりそうだと思ったリョータは、休憩スペースが無いかと周囲を見回すが、飲食できる場所しか座る場所は無さそうだった。


 そこは大人がビール…こちらの言い方だと、エールを飲んだりする居酒屋のような空間。


 子供では近寄った瞬間に絡まれるのは必須。


 仕方なく床に座ろうと思ったのだが…


「リョータどうした?」


 とギルマスの締め付けから助けてくれた冒険者が、声を掛けてくれたのだ。


「あのね、伐採の依頼を受けようと思ったんだけど、

 本数が書かれてなくて…待ってるの」


 聞かされた彼は「ああ、座る場所が無いな」と飲食スペースから1脚の椅子を持って来てくれたのだ。


「酒臭い場所に座らせたくねぇからな、ここで待ってな」


「ありがとー!!」


 何て良い人なんだ、ギルマスの締め付けから助け出した手腕も凄かったが行動が紳士的だ。


 たしかSSだったよね?俺も尊敬されるSSSになりたいな。


 大人用の椅子(バーカウンターにあるような丸椅子)なので、よじ登るようにして椅子に座り、受付のお姉さんが戻って来るのをひたすら待つ。


 これ…時計とかあると便利だよな。


 この世界に来て時計を見てないんだけど、存在するのかね…。


 雑貨屋に行ってみるか。


 待つ間、キョロキョロとギルド内を見回して時計がある事に、ようやく気付く事が出来、それから何分経過したか…を把握できるようになったのは嬉しかった。


 あー…時計あった。


 でもギルドだからって可能性があるな。


 雑貨屋に行くのは決定だな。


 時計に気付いてから30分…ようやく商業ギルドのマスターが申し訳なさげにリョータに近づいて行く。


「お待たせして申し訳ございません。

 リッツェの森で木材を伐採する依頼を受けて下さった方ですか?」


「・・・そう・・・ですけど、貴方は?」


「申し遅れました商業ギルドマスター、

 クリスチャン・ハワードと申します」


「リョータと言います(家名は伏せなきゃな)」


「依頼を受ける事を決めて下さった方に指摘されるまで、

 自分の出した依頼に不備がある事に気付かず、

 申し訳なく存じます。

 今回、伐採して頂きたい本数は50。

 お礼は依頼書に記入した倍額を出させて頂きます」


「へ?!ば、倍額ぅ!?

 い、い、いくら何でも多すぎます!」


 ティングで1本1万で依頼を受けたのに対し、リッツェで受けようとしている依頼の達成金額(1本5万)の倍・・・10万と多すぎるのだ。


 クリスチャンは、不備があったのに気付けなかった責任を取りたいと言い張り、頑として金額を下げてくれる気配はなく、しぶしぶ依頼を受ける事にしたのだった

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