第86話:ひとっ飛びでリッツェへ

 報酬を両替して貰った状態で貰い受け、リッツェに戻る旨を伝えると、とても残念そうな顔になっていた。


「勉強しなければならないのは知っているからこそ残念だわ」


「学校が始まるまで未だ、

 時間があるけれど、

 戻って住む場所を確保しなきゃだから御免なさい」


「いいのよ。気を付けて戻ってね?」


「はい!」


 職員は「徒歩で戻る」と思っているからこそ、盗賊が現れる可能性がある事を心配しているのだが、リョータは「転移で戻る」ため、盗賊の心配をしなくても大丈夫なのだ。


 しかも彼は危険とされている森の中から戻るのだ。


 他の人が実行しようものなら、危険すぎて通り抜けようなどと思わないのが普通なのである。


 小桜の背に乗り「移動している」と見せかけ、ティングの門番が見えなくなった頃、森の中へと分け入り小桜を影に控えさせようとしていた。


「小桜、影に控えてくれる?」


【今回は一緒に転移して下さいませ】


「一緒に?」


【はい、万が一・・・ではありませんが少々、

 嫌な予感がしてますの】


 野生の感…と言う奴だろう。


 小桜は移動した先で「何か起きる」もしくは「何かある」と感じたのだ。


「判った、何か起きる可能性があるんだね?」


【何がある…と言うのを伝えられないのが申し訳ないのですが…

 回避できる可能性を持った方が良いと思いましたの】


 そりゃそうだよね。


 何が起きるか判らないのが普通だし、ゴマや琥珀を保護したのだって偶然だったもんね。


 リッツェに転移魔法を使い飛んだ・・・のだが…オークが目の前にいて一気に緊張感が増したのは言うまでも無い。


あるじ!】


 剣を抜く暇すらない状態だったので、小桜がオークの喉元を噛み切り事なきを得られた。


「た…助かった~、小桜ありがと」


【嫌な予感がオークの目の前に出る事だとは思いませんでしたが、

 主が怪我をしなくて良かったですわ】


 オークと対峙した痕跡は残らなかったので、そのまま小桜の背に乗りアヴェルから戻って来たように見せかけ、門番にカードを見せリッツェのギルドへ向かった。


 リッツェここを出て、1週間も経過してないのに懐かしく感じるね。


【本当ですわね。

 とは言いましても主、

 日付の感覚が間違ってますわよ?】


 え?もしかして1週間、経過してる?!


 保護されてから1か月「は」経過しているのに気付いたのも束の間、あれから更に1週間、経過しているのだと指折り数えて見たら気付いてしまった。


 …うん…経過しちゃってるね。


 表面上は何も無いように見せかかてはいるが、内心は物凄くショックを受けたまま、リッツェの冒険者ギルドへ木材伐採の依頼が貼りだされて無いか確認する為、ボードへと向かった。


 さて・・・と、伐採なら低いランクの所にあるかな~。


 リッツェを出た時点ではEだった為、EからBに掛けての依頼をくまなく探してみると、やはり伐採依頼が張り出されていた。


 お?有るね…勝手に伐採したら罰になる…とは書かれてないけど、聞いておくのが得策だな。


 伐採依頼の紙をボードから剥がして受付に持って行く。


「これお願いします!」


「あらリョータさん久しぶりねぇ。

 伐採依頼を受けてくれるのは嬉しいわぁ」


「あのね、

 もし勝手に切ったりしたら怒られちゃうのかな?」


「リッツの森での伐採は基本、自由なの。

 だから間違って倒してしまっても罰せられないわ」


 ティングとは違う理由(多分)で罰が無い事を知った俺は、依頼書を見て確認しておかなければならない事柄に気付いた

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