第85話:納品しようとして職人に拉致られる

 ティングの森へと戻ったリョータは湖周辺から5本、間引く事にした。


 10本、貰えるとしてリッツェの森での伐採を聞かないとだな…。


あるじ、10本で足りるのですか?】


 多分、足りないと思う。


 リッツェの森でも伐採するけど基本、人が入り込まない場所からの間引きだから、気づかれないかな~とか思ってる…でも…やっぱり多く伐採したら森が壊れるかな?


【余りにも大量の伐採は森を破壊し兼ねませんが、

 間引く程度の伐採でしたら大丈夫と思いますわ】


 取り敢えず50本の間引きをティングで終わらせて、リッツェに飛ばないとね。


【マジックバッグに入るギリギリが恐らく50本なのでしょう。

 それ以上の伐採も望まれているかも知れませんものね】


 ああ…確かに、そうか。


 基本的な持ち鞄となればマジックバッグで、それ程、容量は無いもんね。


 俺はアイテムボックス持ちだって事は内緒にして・・・る・・・これ、50以上、伐採してもバレない?


【…主?黒い思惑を持っておりません事?

 いくら容量が無限大だと言っても、

 森を破壊するのは止めて下さいまし】


 判ってるよ。依頼本数だけ伐採するから安心して。


【なら良いのですが…】


 依頼された本数50を伐採するのに、時間はかからなかった。


 密集している場所から5本づつ…合計10カ所から伐採すれば、森を壊す事なく、本数を集める事が出来た。



 * * * *


 ギルドに向かい


「依頼された50本、伐採して来たよ!」


 と報告すれば待ち構えていたのだろう。


 木工関連の職人が一斉にリョータを囲ったのだ。


「待ってたぞ!」


「ティングの森に自生する木材が、

 40も手に入れられるなど、

 夢のようだ!」


 わいわいガヤガヤと、職人がリョータの両腕を持ち上げるようにして、ズルズルと連れて行く。


「ちょっ…なっ…離して下さいぃ!!」


 まるで小さな子供が親の腕で持ち上げられ、ブラーン…と足が揺れているように連れられる姿は可哀そうに思えるくらいだ。


 冒険者ギルドからギルマスが出て来て


「木工ギルド職員、

 その状態で冒険者ギルドの所属する人物を連れて行くのなら、

 こちらも考えがありますよ!」


 と忠告を口にした事で、ようやく止まってくれた。


「ギ・・・ギルマスっ…」


「念願の木材が入荷したから、

 と言って伐採してくれた冒険者をそのような扱いで連れて行くのなら、

 伐採依頼の金額を倍以上に請求しますが、

 宜しいですか?!」


「うぐっ」


 木工部門の責任者と思われる人物は、バツが悪そうに


「・・・申し訳ない…つい…滅多に出回らない木材が、

 40も入荷すると聞いて…

 いてもたってもいられず…このような事をしでかしました」


 冒険者ギルドから商業ギルドへ木材が40本、伐採される事が伝えられていた。


 それと同時に木材加工部門にも、その情報は伝わり今の状況となってしまったのだ。


「今回はリョータ殿が伐採して下さったから良かったものの、

 他の冒険者に同じ事をしていたら、

 処罰を受けていたのです、

 その事は自覚して下さい」


 きつ~い叱責を受けた木工部門は、反省しきりではあるものの、やはり木材を色々と加工できると言う思いが強く、反省もそこそこに木材を貰い受ける場所へとリョータを案内した。


「こちらに40出して下さい」「はーい!」


 ドサ…と出された木材に職人たちは感動の涙を流し、色々な品々に加工する事に想いをせるのだった

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