第78話:行き先を迷うが・・・

 ダンジョン近くで野営した翌日、戻るも行くも同じくらいの距離で、どちらに行くか迷ってしまう。


「うーん…どっちもどっちなんだよな。

 王都に行くのもティングに行くのもアヴェルに行くのも…」


 小桜の足で向かえば、王都で有ろうがティングだろうが、日数を掛けずに行く事が可能だからこその悩み。


あるじが王都に行けば「英雄」扱いされかねませんわよ?

 ティングかアヴェル…リッツェなら確実に、

 元通り採取する事も可能では無いかしら】


 そうだよな…一気に表面上のランクがBまで上がってしまってるし、カードを出した瞬間に、ティングやアヴェルだと「勇者」もしくは「英雄」なーんて言われかねんな。


【他に行ける場所があったとして、

 受付を要する依頼が存在するか判りませんものね】


 ああ、冒険者ギルドが無い可能性って事か。


【小さな村にもギルドが存在するか否かなど、

 わたくしは知らないので…】


 判ってるよ小桜。


 扱われるの巻き込まれる事を覚悟するとして、何処に行くかだな…。


 ティングに行って考えてもいいか。


【領での様子を見てから、

 他の領地へ向かっても宜しいかもしれませんわ】


 まあ、あの令嬢がいるアヴェルは却下だが、ティングで酷い扱いをされなきゃ数日は居座ろうかな。


【そう言えばリッツェは数日滞在しましたが、

 アヴェル以外は通過するだけでしたわ】


 取り敢えずティングに向かってくれる?


【勿論ですわ】


 小桜の背に乗る前に野営した証拠を隠滅し、ティングに向かい始めた。



 * * * *


 門番の視界に入りそうな場所で降りる訳にもいかないので、手前で小桜から降り、一緒に歩いてティングの入口へ向かう。


 普通に接して貰えたらいいんだが、王城での出来事が変な噂として流れてたり・・・しないで欲しい。


 リョータの不安は見事に的中するのだが、変な噂では無く大いに盛られた内容だったのだ。


「お?冒険者になりたてのボウズか」


「うん。この領土を見て回りたくて来たの」


「そうか、そうか。カード見せてくれ」


「はーい!」


 カードを鑑定するだけで犯罪の有無が判る仕組みだと、最近になって理解できた。


 そりゃー普通なら水晶のような品に手を乗せて犯罪の有無を調べる、って事は多くのラノベで表現されてたからな。


 カードで調べるってのが意外だ・・・


「こ、これは失礼いたしました!

 リョータ様は問答無用で通過が可能となっていますので、

 お通り下さい!」


 が…何で問答無用にこうなった


「へ?どうして…問答無用って何で?!」


「・・・何も聞かされていないのですか?

 リョータ様は王様より『自由』と言う権利を頂いたと、

 伺っております。

 その自由と言うのは、

 全ての領土や国を行き来する事も含まれております」


 ぉぅふ・・・マジか…。


 領土や国を通過する自由「まで」望んだ訳じゃないのに、あの王様は全てに「自由」を与えやがったのかよ。


「そこまで貰った覚えは無いのにな…普通に検査受けるよ?」


「ですが王命ですので…」


 うーん王様に領土や国の行き来に対しての自由を解除して貰う…いや、逆に検査を受けずに行き来が出来るなら、それに越したことはないか?


「・・・わかったぁ・・・」


 思いっきりガックリと肩を落としてティングへと入って行き、商店が立ち並ぶ一角へと向かって生活必需品を購入する事とした

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