第77話:スープカレーは涙味

 買い置きしていたパンを取り出し、従魔たちを呼び出す。


「小桜、権太、ゴマ、琥珀~ご飯だよ~」


 犬系や猫系は確か、タマネギが駄目だった気がしたので、彼らにはカレー味のスープのみを用意した。


【『[<はーい>]』】


【あの実が…こんな色でしたのね。

 それに香りが何とも…】


『カ、カレーだぁ』


「ゴマは懐かしい匂いだよな。

 俺もカレーライスが食いたかったけど、

 米を見つけてないからな。

 今は無理でも将来はカレーライス…

 食いたい」


 じわ…と涙が浮かんでしまうが、木で作った先割れスプーンでカレーを掬い、ジャガイモをパク…。


 もう涙腺は崩壊してしまうには十分だった。


「・・・異世界で…カレーを口に…出来ると…思ってなかった…」


あるじ】[『<ご主人様…>』]


 気づけば異世界に転生していて、日本と同じ食生活は望めないと思っていたら、お稲荷様が恩情を掛けてくれ、見た目は違っても日本で買いそろえる事が出来る品々を用意してくれた。


 だからこそ今カレーを口に出来ているのだと思えばこそ、涙が止まらなくなるのも無理な話。


 少しだけ涙の味がしたが、もくもくと口に運んで行けば、あっと言う間に平らげてしまい、作ったカレーは鍋ごとアイテムボックスに収納。


「何処かで米があれば手に入れたいな。

 次こそはカレーライスを食うぞ!」


 食い意地が発動しても仕方ないだろう。


 転生してから食したのは、血圧を気にしなければならない塩味の食事。


 勿論、塩を使って無い食事も口にしてはいるが、健康的な食事とは言い切れない。


 だからこそ米は見つけて手に入れておきたいと思ったのだ。



 * * * *


 食事を終えたリョータは野営する為の場所を見つけ、寝る体制を整えた。


「小桜ぁ、ゴマと交代で見張ってくれる?」


【勿論ですわ】


「じゃあ、おやすみ~」


 寝つきが良いリョータは、直ぐに寝息を立てて寝入ってしまった。


『ご主人様は日本からして来たのでしょうか?』


【いいえ。転生だとおっしゃられてましたわね】


『一度、生を終えられた?』


 ゴマは「まさか…あの時の人?」と思い出していたのだ。


【はっきり聞いた訳では無いので断言できませんわね。

 でも、どうして聞くのです?】


『…僕は野良犬だったんだ。

 僕を見つけた人が優しく餌となる手持ちの…

 何だったか…もう記憶もないけど。

 食べた味は忘れられず、

 助けた人の匂いだけ覚えてたんだ。

 その後、僕は車に撥ねられたけど…』


【その助けてくれた人とは…

 まさか…リョータ様?】


『多分・・・。僕も気が付いたら森の入り口だったし、

 助けて貰えるまで、

 人に気付かれないよう餌を探してたから…』


【種が違っていれば優遇して貰えたかも知れませんが、

 この世界は獣に厳しいですものね】


『うん。ご主人に助けて貰えなかったら、

 死んでいたよ』


 不運にもリョータが事故に巻き込まれた時、ゴマ一緒に巻き込まれていたらしい。


 一緒の場所じゃなかった理由は、冷遇されるのが判っていたからにすぎない。


 時間がくればリョータと再会できる、と言われ数日ではあるが、辛い日々を送り彼の従魔になる事が叶った

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