第76話:異世界でカレー

 カレー粉を用意して、野菜と肉を切り分け鍋を用意して、かまどを作る。


「さて、

 油は肉から切り出したのを使うとして、

 水は魔法で作った水が一番、安全だよね?」


【そうですわね、川の水でも安全でしょうけれど、

 魔法で生み出す水が一番ですわ】


 鍋は予めティングで購入した品を使う事にし、鍋を竈にセットした。


 小枝を集め、落ち葉を集め指先にライターの火くらいを魔法で生み出し、着火させた。


 良く熱せられた鍋に油を落とすと、ジワ…と広がって行く。


 一口大に切った牛肉を炒め火を通しておき、煮えにくい品から鍋に投入。


 程よく火を通して水を投入…と此処ここで思い出したのが灰汁あく


「…何で作り始めてから気づくかな…」


あるじ?】


「肉から出て来る灰汁を取るのにオタマが要るの忘れてたんだよ。

 魔法でどうにかなるか?」


【灰汁と言うのが何なのか判りませんが、

 取り除く為に魔法を使うなど…有り得ませんわ】


「うっ…。だったら代わりに仕えそうな葉っぱは…」


 周囲を見渡し「お玉」として使えそうな草は皆無なのだが、水辺に目を向けると蓮の葉に近いモノが自生しているのが見えた。


「あれなら使えそう」


 火元から離れては駄目なので、遠距離でも魔法を使えるのか?と言う実験を試しにして見た。


「採取」


        バサッ…


「やべ…束で採取できちゃった」


 1本のつもりが10束…手元に刈り取った状態でしまった。


【あ~る~じぃ?】


「い、いやさ、実験的に刈り取れないかなーって、

 思って魔法使っただけだってば」


【それでもですわ。

 束で…束で蕗葉ふきばを持って来るなど…】


「え・・・?ふきば…蕗なの?!」


 仰天して手元の葉を鑑定してみた。


~~~~~~~~~~

蕗葉(ふきば)

・大きな葉を取り除けば食べられる

・見た目ははすだが蕗

・大きな葉は傘としても使える

~~~~~~~~~~

 ふ・・・蕗だ。祖母ばあちゃんが炊いてくれてたけど、苦手だったんだよな。


 思い出すのは後回しにして、葉っぱの部分を少しだけ加工して…。


 蓮の葉…に似た蕗葉を器のように加工して「おたま」代わりに使い、灰汁を取り除き、クツクツと煮込んで行く。


 菜箸さいばし…は無いので小枝の先を少しだけ尖らせ、芋の固さを確認。


「カレー粉を入れて煮込む事を考えたら、これくらいの固さで大丈夫かな?」


 粉状にした「粉の実」を3個分、入れてかき混ぜる。


 カレー独特の香りが鼻孔をくすぐる。


「ん~~~~!いい香り!美味そう~♪」


 「おたま」として加工した品は使えないので、味見に使う葉を加工しておいた。


 クツクツ煮え立つ鍋から味見分、カレーを掬う。


 ふー・・・ふー・・・こくっ…。


「ん・・・ま~」


 3個で甘口と中辛の間くらいの辛み。


 どうしようかな…。


 4個目、入れて辛くなるより今の辛みでスープカレーっぽく食べるか。


 今の所「米」は見つかっていない。


 そうなればカレーライスは無理でも、スープカレーならパンで食べる事も出来る筈。


 にやにやしながら計画を立てるリョータの腹が空腹で…では無く、カレーに刺激されグウ…と鳴った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る