第74話:王都で知った驚愕の事実(2)

 エーテルディアの神様から聞かされた事実は、とんでもなかった。


 俺が生まれ育った田舎の裏庭に小さな祠が存在していた時代もあった(過去形なのは区画整備で移動させられてしまっているから)。


 頻繁に「お稲荷しゃーん、どーじょ!」とか可愛らしく、小さな手で祖母が作った稲荷寿司をお供えしに行って「おいしいでしゅか?」と言っていた記憶が思い出され、恥ずかしさで死ねる(恥ずか死ねる、って言うんだっけ?)


〔稲荷神が言うにはの、

 そなたは残り30年以上は平和に暮らせた筈なのだそうじゃ。

 冷蔵庫の中身を空にしていた事を思い出し、

 買い物してから帰宅する事を決めた故の事故…〕


 な・・・ん・・・で?何でそこまで知って・・・{見て居たからよ}


{貴方の事を見守るしか出来なかったけれど、

 見ていたからこそ恩情を掛けたいと思ったの。

 ごめんなさいね}


 宿泊する予定の宿に向かいながらも、二柱ふたはしらの神々からの説明に驚くしか無かった。


 お稲荷様に見られてたの…か。


{小さな小さなリョータ。

 貴方の優しさはとても嬉しかったわ。

 区画整備で移動させられると知って、

 大人に負けじと移動させちゃ駄目だって、

 反対意見を言ってくれたお礼も兼ねてるのよ}


 お稲荷様…。


{どうか…どうか異世界の住みたいと思った場所で幸福だと…

 幸福な一生だったと報告が出来る生活をして下さいな}


 有難うございます…お稲荷様だけでも俺を覚えておいて下さい。


 今の器はチビですけどね。


 そう言うリョータは苦笑を浮かべていたが、事故で転生してしまった今の世界を知り、生活して行く覚悟を10歳ながら心に誓ったのだった。



 * * * *


 肉と野菜を入手したリョータは、スパイス…すなわち調味料を扱っている場所を探していた。


 うーん…流石に無いか。


あるじ?一体、何を探してらっしゃるの?】


 カレー粉を探してるんだよ。


 無くても作れる材料があれば自家製も可能なんだけど、粉のレシピ…知らないからね。


 知っててもターメリックとウコンくらいだし…違うの作るか。


 本当ならカレーライスもどきを作りたいと思い、肉や野菜は用意できた。


 ただ肝心のルーになりえる材料が、1つも見当たらないのだ。


 自家製で作るにしても、全ての材料を知っている訳では無いので作れる訳も無い。


 何が何でもカレーが食いたい!と言う訳では無いのだが、やはり国民食とも言えるカレーを異世界で…と言う思いで選んだに過ぎない。


 仕方ない、揃えた材料を使ってスープを作るか。


 贅沢な出汁になりそうだけど、森の一角で作るしかないだろうな…。


 料理を作るとしても懸念は場所。


 宿の厨房を使わせて貰う訳に行かないと踏み、作れる場所となれば誰も見る事が出来ない場所。


 となると森の中で魔物が寄り付かない場所しか作る事は不可能だろう。


 小桜と共に王都からティングに戻る途中にある森では無く、アヴェル近くのダンジョンに近い場所での野営となりそうだ

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