第73話:王都で知った驚愕の事実(1)

 ランクが上がってしまう、と言うイレギュラーが発生したものの、王都まで来たからには野菜や果物、肉などが多く売られている可能性があるのでブラッドさんたちと別れ市場のような区画へと足を向けた。


「奥さん!今日は新鮮なオーク肉が入ったぜ」


「あら、頂くわ」


 あちこちで購入を促す呼び込みの声が聞こえ、とても賑やかだ。


「うっわぁ~凄く賑わってるなぁ」


あるじ、何を買うつもりですの?】


 ん~…異世界あっちの食事が作れるかって言うのを調べたいってのと、物の名前って言うの?食材の名前を知りたいって思ったんだよね。


【そう言えば森でゴマと言う植物を見つけましたものね】


 一番の目的は食料となりえる品の名と使用用途。


 同じ使い道ならまだしも、こちらは異世界。


 日本と同じように使われているとは限らないと思ったのだ。


 やがて野菜品物を並べた店舗の前に到着し、リョータは目を見開いてしまう。


 なっ?!完璧に異世界あっちと見た目同じじゃないか!


【見た目が同じ…?どう言う事ですの?】


 野良犬だったゴマに名づけした時に見た品がアケビに似ているって言ったでしょ?


【えぇ…はっ?!まさか…

 名前は違うが見た目は異世界の品になっているのですか!?】


 その「まさか」だよ。


 大根に見えてるのに名前がゴボウだし、ゴボウは大根ってなってる。


 ニンジンの見た目はジャガイモで、サツマイモの見た目は単なる芋…神様は似通った世界って言ったけど、名前だけ違って全く同じじゃねーか。


 リョータは盛大な溜息を吐きつつ、ニンジン(見た目ジャガイモ)、ジャガ、タマネギ(見た目ユリネ)を5個づつ購入して行き、肉売り場へと向かいながら何が売られて居るかすら把握して行った。


 肉の種類としてはオークがあるって言うのは呼び込みの声で知り得たけど、あるとしたらラビット系?


【わたくしも詳しく知りませんわ】


 だよね~…店頭に並ぶ肉の名前を見て…目が点・・・。


 ナニコレ…。


 オークは判る…ホーンラビットってのも判る…判るんだが…どーして「牛肉」や「豚肉」だけでなく「鶏肉」まで揃ってんだよ!


【あ、主ぃ?!一体、どうされましたの?】


 すまん、取り乱した。


 普通な、オークが豚肉でドラゴンが牛肉…みたいな括りが異世界あっちの小説には定番で出て来るんだよ。


 それなのに…牛肉、豚肉、鶏肉…そのまーんま置いてある。


【え…?あら、本当ですわね。

 オーク肉と言う隣に牛肉と言う肉も置かれてますわ】


 どーなってんの?


〔すまぬな、

 転生した時に気づいた神がおってな、

 似た野菜があるのなら…と考えた稲荷神から差し入れじゃで〕


 ・・・は?裏にあった「お稲荷さん」の事、言ってたりします?


〔そうじゃ、

 事故で転生してしまった其方そなたの不遇を嘆いてのぅ。

 本来なら存在せぬ肉類を浸透させたのじゃ〕


 ・・・何してんの?


 稲荷神社の神様、いくら不遇だったとは言っても「それ」やっちゃー駄目っしょ

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