第67話:緊急招集

 誰もいない事を確認したリョータは隠遁いんとんを解き、宿へと戻ろうとしたのだが半鐘のような音が周囲に鳴り響く。


             カンカンカン、カンカンカン!

         緊急招集、緊急招集。

         Fランク以外の者は大至急ギルドに集まって下さい。

         繰り返します。

         Fランク以外の…


 緊急招集の呼び出しが、魔法で施された瞬間に立ち会う事になってしまった。


「何これ…」


「お前も冒険者か?

 ランクFじゃなければギルドに向かってくれ」


「Eも対象?」


「あぁ、緊急依頼が掛ったんだ。

 こりゃ大捕り物になるだろうよ」


 これって、さっき聞いたゴブリン上位種をB以上が対応する代わり、CからEまでの冒険者がゴブリンを倒す事になった?


【その可能性はありますわね】


 隠蔽してなければ上位種の所に行けたのだが、隠蔽した状態のリョータはEランク。


 その状態でSからBまでが対応している場所へ助けに向かうなど出来ないだろう。


 小桜を影に控えさせてギルドに向かうと、ほとんどの冒険者(大人ばかり)がギルマスの前に整列していた。


「招集に答えてくれたE以上の冒険者諸君、

 良く聞いて欲しい。

 王都に向かう街道傍にゴブリンの巣が10個ほど

 多くのゴブリンが街道を埋め尽くし対応して居たのだが、

 王都ちかくの街道に上位種が生まれてしまい、

 下位のゴブリンへ対応できない状態に陥ってしまった。

 したがって報酬は後回しになってしまうが、

 緊急討伐依頼として皆にはゴブリン討伐と処理を願い出たい」


 ざわざわ…ざわざわ…(何て事だ、そんなに多くのゴブリンが?)

 (どうして街道に?)(誰か壊したのか?!)


 ざわめきの中に聞こえた声の多くは、ゴブリンの巣が壊されていたと知ったからだった。


 まあ「そう」なるよね。


 恐らく巣1個にいるゴブリンは20くらい…多くても30だろう。


 それが10個もあって、彼方此方あちこちに出没しているんだから、処理なんぞ出来る状態じゃないのは予測できたんだろうな。


「ティングを襲撃されるのを避けたいと言うのと、

 王都に多くのゴブリンを向かわせたくないと言う理由により、

 緊急討伐をお願いしたい。頼む…」


「ギルマスよぉ、頭、あげてくれや。

 俺たちは冒険者だ。

 どんな魔物であれ襲われると聞かされて、

 動かねえ阿呆はいねぇよ」


 多くの冒険者は「そうだ」「そうだ」と討伐に加わる決断を下して行く。


「一番、悪いのはゴブリンの巣を壊した人でしょ?」


 俺の声が綺麗に通ってしまい、注目を浴びてしまう。


 やべぇ目立っちまった。


「ふっ…あははは!確かにな。

 お前もランクE以上、なんだな?」


「うん。なったばかりだけど、力になれるかなぁ?」


 いかにも不安ですって顔…出来てるかねぇ。


「あぁ、なれるさ。

 1人でも倒してくれる冒険者がいるってだけでも有難いんだ」


 ポン…と俺の頭に右手を乗せ苦しそうな顔になっていた。


(こんな子供にまで依頼を出さないと対処できねぇなど、

 壊した野郎は八つ裂きにしてぇな)


 彼の心の声が聞こえてしまった。


 周囲に聞こえてないからイイけど、それ…口に出したら不敬罪で処罰されるよ?


 約50人もの冒険者たちが、王都へ通じる門の前に集結し、一斉討伐が開始される事となる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る