第66話:王都への道で起きた事を調べる

 子供1人だけで通してくれないだけでなく、ランクが低い冒険者も通る事が出来ないよう見張られている様子が門番の態度で理解できた。


 いくらなんでも、Bランク以上の冒険者通さない…とは思ってなかったけど、Cランク以下だと対応が出来ない何かがある?若しくは居る?!


【そうとしか考えられませんわね。

 高ランクの冒険者が通れ、

 新人や低いランクが通れない、

 と言う事は、ランクが低ければ対応が難しい事柄が、

 街道で起きている…と見るべきですわね】


 晴天で良かった。


 これが雨天だと、足跡で誰かがいるって気付かれてしまうからね。


【それもですが、王都までの道のりが、

 音がする道で無い事も幸いでしたわね】


 小桜、悪いけど俺を乗せて街道を進んで欲しいんだ。


あるじ…?もしかしなくても触れていれば、

 わたくしも消えるとか言いませんわよね?】


 ううん。どうやら触れてたら消えるみたい。


【(何とも規格外な魔術ですこと)判りましたわ】


 小桜に乗せて貰い、王都に通じる門近くで隠遁いんとんを使い、気配を消す。


「止まれー!王都に向かう要件を述べよ」


「王都ギルドからの依頼だ」


「お手数をおかけしますが、お願い致します」


「・・・判って居る」


 王都からの依頼…?そう言えばブラッドさん王都からの依頼で戻れる保証が無いとか言ってなかったっけ?!


 まさか…その事と街道閉鎖は繋がってたりする!?


【…可能性がありますわね】


 許可を貰った冒険者の背後に付き、一緒に門を出て驚いた。


 こ、これは…酷いな。


 そこかしこに「ゴブリン」の遺体が積み上がっていて、焼き払う事すら出来ない状態と化しているのだ。


 声に出さなかった俺を誰か褒めてくれ。


【子供を王都へ1人で向かわせない理由が判りましたわね】


 ああ、これでは表Eランクの俺が通るどころか、平気で歩くなんて芸当をしようもんなら疑われ尋問を受ける事になってただろうな。


【だとしても街道ちかくにゴブリンの巣が現れる事など無いのですが…】


「しかし、ひでぇ有様だよな」


「ああ、どっかの馬鹿がゴブリンの巣を知らなかったからと言って、

 叩き壊せば襲撃を受けると気付かなかったんだろうな」


 いくらなんでも巣を叩き壊すとか…自殺行為じゃん。


【ゴブリンの巣と思わず何と思ったのでしょうね】


 まさかと思うが憂さ晴らしで叩き壊した?


【…いくら何でも…それは……】


「気付かず叩いたとして、

 ここまで酷い事にならんだろーが」


「それがなぁ…

 ひねくれた誰かさんが城を抜け出してらしい」


「・・・口に出したら不敬扱いになる人物か。

 やだやだ…」


 はぁ~…と盛大な溜息を吐き出してはいるが、そこかしこにゴブリンがいる状態では気を抜けば上位種が生まれる事になる。


 嫌そうに討伐する姿に同情するしかなかった。


 不敬扱いって言った?ファニーのとか言わないよな?


【身分が上の人物でしたら…王族か公爵くらいですもの、

 そうなると…噂が正しければ…ライン・ファニー第一王子が

 「ひねくれ者」と呼ばれていたと思いますわ】


 はぁ…ゴブリンエンペラーが生まれなければイイんだけど…


「た、た、大変だ!誰か手を貸してくれ!!

 王都側にエンペラーが一体、

 ジェネラル級が大量に生まれてしまった」


 壮絶な死闘になりそうだな。手を貸すか?


あるじ…止めておきましょう。

 主はEランクですのよ?

 それが瞬殺などすれば悪目立ちしかしませんわ】


 見捨てる事が出来ないが、目立ちたくない…そんな葛藤を抱えたままリョータは元来た道を戻って行き、門番が出入りする扉からティングに戻って行くしかなかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る