第63話:意地悪な冒険者(2)

 どうして今の状況になったのか知りたい所だが、目の前にいるギルマスの威圧が怖くて聞ける雰囲気すら無い。


「・・・ギルドの規則を忘れたとは言わせないが、

 知っていて彼が取ろうとした依頼を横から奪ったのか?」


 明らかに顔面蒼白、真っ青…いや真っ白な顔色で「どう言い逃れしようか」思案しているようだった。


「我らが依頼を受けても構わない討伐対象だろうが、

 子供が受けられるって事じたいが許しがたいんですがね」


 暗に子供は大人しく勉強なり手伝いなりして冒険者と言う職になるな、と言いたいんだろうねぇ。


 このオバカ5人衆は。


「10歳から冒険者になる事は国で許されているのだが?

 王様の決定に刃向かうと言う事は、

 堂々と不敬を働く…と捉えて

  「・・・ご、ごめんなさいっっ」」


 謝罪を口にした阿呆5人衆は、脱兎の如く立ち去って行き、ギルドの中は元の賑わいを取り戻していた。


「君、名前は?」


「リョータって言います、

 助けてくれてありがと!」


「いや、

 今のは奴らが悪いんだから気にするな。

 スライム討伐で間違いないな?」


「うん!僕Eランクになったばかりだし、

 魔法にも慣れて無いから、

 練習するならスライムが良いって、

 ブラッドさんに教えて貰ったの!」


 仕立て屋ブラッドさんの名を出した瞬間、ザワついていたギルドがシーンとなった。


 あれ?もしかして出しちゃ駄目な名前だったりした?!


「そ、そうか。

 彼が進言したのなら間違い無いな。

 受付で依頼を受けて欲しい」


「はーい」(なーんか裏が有りそうだね)


【そうですわね】


 受付に依頼書とギルドカードを出したのだが…洞窟ダンジョン踏破を隠蔽し忘れていてバレてしまうのだが、有り得ない方法でバレて行く。


「えっ?!えぇーっ!!

 あ、あのっ…難攻不落な洞窟を・・・こ、攻略ぅ?!」


 あのさ?普通、何処のダンジョンを攻略した…て事、口に出す必要あるのかね?


 チラっ、と後方にいたギルマスを見れば、呆れと怒りを滲ませながら俺の情報を安易に披露した受付嬢に近づいて行く。


「どんな魔物の巣窟でしたか?

 どれくらいの期間で踏破しましたか?

 あと…あと…えっと…そうだ!

 何に「…いい加減にしなさい」」


 ゴツンっ…と頭に拳が落とされた。


「ひゃぅ!マ、マスターだって…だって、

 難攻不落な洞窟ダンジョンですよ?!

 知りたいと望むのは当たりま

  「・・・ギルド規則をも忘れたか?」え・・」


 文字通りサー…と血の気が引いて行く様を目の当たりにしたのだが、今回ばかりはギルマスが正しい。


 どんなに珍しい事がカードに記載されていても、大勢がいる場所で披露する事は許されない。


 それはギルド協会員の規則にも書き記され周知されている筈なのだ。


 それを犯した時点で処分は免れないのが実情だ。


「ギルド職員が大勢の冒険者がいる受付で、

 今から依頼を受けようと言う人物のカードに記載されていたからと言って、

 ダンジョン攻略情報まで出して良いと言うのを初めて知ったんだが?」


 絶対零度で睨みつけられた受付のお姉さん…ご愁傷様~。


 身から出た錆…庇う事など考えられないもん!

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