第61話:ダンジョン攻略したが…

 10階層が最後らしく、ラスボスと対峙すべく、扉の前に立った。


「小桜、こんなって普通ないよね?」


 リョータは「苦戦する」と気合を入れて挑んだのだが、3階層から10階層に到達するまで、強い魔物と遭遇する事が皆無だったのだ。


 正し、リョータに取っては…なのだが、気付いていないらしい。


【わたくし、初めてダンジョンと言う場所に来ましたが、

 ここまで何事も無く、

 弱いであろう魔物に遭遇しないなど

 思いませんでしたわ】


 普通、上位種がいないにしても中級クラスの魔物って出るよね?


【恐らくは、そうでしょう】


 それがボス部屋まで一切、遭遇しなかった…って事は…


【ボスも弱い・・・?】


 可能性あるよね。


【信じたくはありませんが…】[何か僕でも倒せそうだよね]


『僕も倒す~♪』「・・・・・・」


 弱すぎるからと言って癒し要員の権太やゴマ、琥珀を向かわせる事に躊躇する。


【危険になったらあるじが対処すれば宜しいのですわ。

 勿論、わたくしも助力いたしますわ】


 判った~。気を付けるんだよ?


[『<はーい!>』]


 先頭にゴマ、中央に権太、後方に琥珀が陣取り扉を開く。


          ぎぎぎっ…


 変な音を立てて扉が閉まり、所謂いわゆる逃げ出し防止が成された。


 気配を察知している俺はボスが何か判ってしまった。


 あー…権太たちでも瞬殺できそう。


【どう言う意・・・確かに即死させてしまいそうですわね】


~~~~~~~~~~~~~~

アホウスライム

・スライム最下位種

・弱き者でも倒せるボス

魔法:なし

強味:打撃に強い

弱み:噛みつき引っかきに弱い

~~~~~~~~~~~~~~

 スライムの名前なのにネーミングセンスが…俺以下?


【…あるじより悪い名づけですものね】


 大きさ的にはツキノワグマくらい?デカイのはデカイんだが…水属性動物だからか、ぽわんぽわん…と揺れる。


 ゼリー食いたくなってくるな。それも果物が入ったヤツ。


【主…彼らが戦う、と言う時に何を・・・】


 あ~権太たちを信用してる…って言うかアレで負けると思う?


 視線の先にいるボスと権太たち…誰がどう見ても権太たちが優勢なのは明白。


 戦うと言うより遊んでいるのだ。


【…遊んで…ますわね。

 ボスで遊ぶとか…有り得ないのですが…】


 ゴマが鼻先でポーン、飛ばされた先にいる権太が猫パンチでポーン…。


 琥珀は壁際にあった柱をよじ登り、高い位置から滑空して飛び移る。


 ポヨン…とスライム自体が揺れただけで、何の攻撃も出していないのだが、琥珀は的確に魔石がある場所へと突き進んで行き潜り込んでカプ…と魔石を咥え・・・


「マジか【魔石を咥えただけですのに…】」


 シャボン玉が萎むように…では無いな。


 あぁ、そうだ!水風船に穴が開いて萎んで行く様に近い形でボスが倒され、ファンファーレが鳴り響く。


        パッパラッパッパ~♪

     おめでとうございますダンジョン攻略しました。

     転移魔法陣がありますので地上まで戻る事が容易くなってます!

     攻略報酬はアホウスライムの魔石。

     その魔石は加工すれば最強の武器にも防具にもなる優れもの♪

     加工職人に持って行くと喜んで加工してくれるでしょう。

     それでは次回、踏破をお待ちしておりま~す♪


 めっさチャライ…こんなんで攻略したと言いたくねぇな。


 リョータのギルドカードに洞窟ダンジョンと記されているのだが、弱すぎた為、最高難度のダンジョンだったと気付くのは、ステータスを確認した時となる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る