第60話:ギルドに内緒でダンジョン踏破へ

 本来なら依頼を受けて潜るべきダンジョンなのだが、やはり異世界に転生したからには挑みたくなるのが俺で、小桜からは呆れられてしまった。


【判っているのですか?

 あるじは中身が青年であっても

 見た目は子供なのですよ?】


 判ってるんだけどね、ダンジョンに挑むのはロマンなんだよね~。


 戦う時に助けてくれる小桜がいるって言うのが一番、大きいんだけど、やっぱ一度は入っておきたいんだ~。


あるじ…】


 従魔になった自分を信じてくれ、一緒に戦いたいと望まれると思っていなかった。


 出会った時は小桜では無く魔物のフェンリル。


 捕まえられて酷い扱いを受けるしかない運命だと思っていた。


 なのに助けられ怪我を癒され、里へ戻っても良いとまで申し出てくれる彼の傍にいたいと願い、かなった。


 次から次へと弱い動物を助け出す優しさを持ち、魂は大人で体が子供…そんなリョータを助けたい…そう素直に思えた。


 確か近くに比較的、優しいダンジョンがあるって検索に出てたんだけど、何処か判る?


【そうですわね……見つけましたわ】


 向かってくれる?


【勿論ですわ】


 比較的・・・とは言えダンジョンは危険がつきものではある。


 あるんだが、フェンリルがいるし犬、猫、モモンガ…。


 うん…戦力では無いや。


 癒し要員だから仕方ないっちゃー仕方ないが…俺が頑張ればいっか。


 てな思いでダンジョンに向かう事にした。



* * * *


 暫く小桜が走ってくれ、ダンジョン前に到着したんだが、形状を見て「これが簡単なのか?」と思ってしまった。


「洞窟ダンジョン?」【そうみたいですわね】


 見た目は洞窟そのもの。


 アヴェルに向かう途中で体を休めた場所に近かった。


 何階層か…判らないけど潜ってみるか?それとも情報をギルド…あぁ駄目だね。


 伝えたりしたら小桜が強引に連れて行かれちまう。


【流石にリッツェのギルドへ報告は出来ませんものね】


 うん。詳しく知識として知ってる訳じゃないけど、領地毎にギルドは存在してて、管理も担っている筈だからね。


 そうなると「これ」はアヴェルの管理地になると思うんだよね。


 小桜が、令嬢に奪われる可能性があるなら入ってみるしかないな。


あるじ…危険かも知れないと判って入るのですね?】


 勿論、小桜を奪われるリスクより良いもん。


 自分の危険より従魔の安全を願うリョータを守るべく、小桜も覚悟を決めた。


【判りましたわ。

 何処まで戦えるか判りませんが向かいましょう】


 洞窟ダンジョンに「何の装備もしない」まま入る、と言う無謀な事をするのだが、彼の場合「思った魔法が作れてしまう」ので装備が無くとも問題は無い。


 入り口から階下へ行くには迷路の道を「迷わず向かう」方法しかないのだが、正しい道が「何故か判ってしまう」みたいで、1階層にいる弱い魔物は魔法の実験台になって貰った。


 2階層からは4匹を従え、十分警戒しながら下って行くのだが、弱い魔物「しか」出没せず、頭をひねりながらもボス部屋まで進む事にしたのだ

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