第57話:ダンジョンの領地アヴェル

 アヴェルの街と言うか領地と言うか…見えて来たのだが、周囲は冒険者でごった返している。


 小桜には元の大きさに戻って貰い、付き従ってるように見せて居る。


 小桜、この状況に思い当たる節はある?


【そうですわね。

 人族の話していた内容が正しければ、

 アヴェルと呼ばれる場所は不定期ではあるものの、

 ダンジョンが頻繁に発生するそうですわ】


 攻略されたら消え、どれくらいかの周期かで、同じダンジョンが別の場所に現れる…って事かな?


【流石に詳しくは知りませんわ】


 別に責めてる訳じゃないからさ、そんなに落ち込まないで?


【判っていますわ】


 ダンジョンで倒した魔物の素材で作られた品やらがあるかな?と思って見えて来た門へと向かうのだが、リッツェと違い門を守る騎士と言うか兵士が「いない」のだ。


 こんな緩くて大丈夫かねぇ。


【恐らくではありますが、

 多くの冒険者が集まる地で悪さをする阿呆いない、

 と言う事かも知れませんわね】


 あ~…確かに。


 新人冒険者しかいなければ、悪さする可能性はあるだろうけど、SSクラスの冒険者は少数だとしてもAクラスの冒険者いるもんな。


 そんな猛者がいる場所で馬鹿はヤラないやね~。


 一歩、門を潜った先には多くの店舗と多くの冒険者が、賑やかに闊歩している様子が伺えた。


 勿論、冒険者ギルド周辺は、何処にダンジョンが出来たのかを知りたい冒険者が、列をなして居る。


「う・・・わぁ~…凄い・・・」


 こんな状態で片手分の薬草を出したら、とんでもない事になるな。


 子供の冒険者は少ないらしく、俺の声を拾った冒険者が不思議そうな顔をしていた。


「何だ坊主、ギルドで依頼を受けるつもりか?」


「そうだけど、これじゃあ普通の依頼、少ないかなぁ」


「そうだな、

 ここはダンジョンの依頼が多いからな。

 普通に討伐依頼受けるならリッツェかティング、

 王都のファニーくらいだな」


 ティング…アヴェルの先にある領地か。


 行ってみてもイイんだけど、う~ん…ダンジョンに潜るのもアリか?


 でも流石に子供1人で潜らせては貰えないかぁ。


「そっかぁ、僕くらいじゃダンジョンも危険なんだね」


「初級者クラスのダンジョンが生まれてれば別だがなぁ…

 ここ最近は危険なダンジョンの発生率が高くてなぁ…

 ティングなら近いし、

 様子を見に行くのもありだろうよ」


 苦笑しながらも教えてくれたお兄さん(俺からしたら高校生くらいのガキ)に礼を述べ、そのままアヴェルは通り抜けるつもりだったのだが、巻き込まれ体質が発揮される事になるなど、思いもする訳が無い。


「ちょっと、貴方・・・冒険者でしょう?!

 何故アヴェルを出ようとなさってるのかしら?」


 うっわぁ…上から目線で傲慢な態度?


 これって爵位を持ってたりしてるのかね?


 鑑定!


~~~~~~~~~~

ナタリー・アヴェル(14)

アヴェル侯爵の娘

おてんば姫

~~~~~~~~~~


・・・典型的な「お嬢様」じゃん。


「アヴェルを出るのに許可がいるの?」


 まあ年上と判っていたとしても、平民が爵位持ちに反発しただけで「不敬罪だ!」と言いかねないんだが、判って無いらしい。


 何とか回避せねば…と思うんだが許可がいる…って言われたら終わりだね

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