第56話:いざアヴェルへ!
ギルド職員やら店のおっちゃんやらに見送られる事なく、俺は門番の人から声を掛けられるだけで済んだ。
「リョータだったよな?
お前、誰にも言わず行くのか?!」
騒動を見聞きしていたのであろう門番は、採取などで領地を離れるのではなく、出立するのだと、気づいてしまう。
「うん、どうせ学校が始まるまでは、
冒険者で生計を立てられるようになっていた方がイイと思うんだ。
だから、いつまでもお世話になり続けるのも…」
判る…それは判るんだが…と言う門番さん…。
それでも前を見据えて旅立とうとしている俺に
「学校が始まるまでに戻って来るんだろ?
楽しみに待ってるぞ」
と何も聞かずに送り出してくれた。
本当は心配で仕方ないんだろうな。顔に出てたし…。
門番の視界から俺が見えない位置まで来ると小桜を呼び出し、体躯を大きくして貰う。
うっひゃ~…もっふもふ~♪
見ただけでもフワフワの毛並みに顔を埋めてしまう。
【
はっ!思わず現実逃避しそうになった。
小桜、ありがと!目的の領地まで小桜の足なら何日で行ける?
【そうですね…
人の足では往復1週間は掛かりますが、
わたくしでしたら2、3日で行き来できますわ】
小桜の背中に
「
そう呟いていた。
【しっかりと摑まって下さいまし】
はーい…。
俺の返事を聞いた小桜は、それはそれは早い速度で森にある獣道を駆け抜けて行く。
車で言うなら制限速度40キロくらい。
それ程、恐怖感は感じられないのは、恐らく耐性が付いたからだろう。
半日ほど、走らせた俺は安全な洞窟があるのを察知し、そこに小桜を誘導させて行く。
「小桜ぁ~、この先右に1キロ、
洞窟みたいな空間があるから行ってくれる?」
「あん!(勿論ですわ!)」
小桜の嗅覚でも「安全」と理解できたのだろう、そちらに向かって走ってくれた。
到着した俺は、足元にフカフカのコケが生えているのを見て、考えが声に出てしまう。
「清流があったりする?
苔って水が綺麗な場所に生えるって言わなかったっけ??」
完全なる疑問形ではあるが、体を横たえても背中が痛くならない「かも」知れないと考えたのだが
【心配でしたら、
わたくしが毛布がわりくらい出来ましてよ?】
と小桜が「抱き枕」ならぬ「抱きフェンリル」をしてくれると言う。
ナニソレ、天国?テンゴクなの?!
小桜が「伏せ」状態になってくれ、俺は彼女の腹に背中をつけて眠ることにした。
夜ご飯は琥珀を呼び出し森の恵みで腹を満たす。
「ふ・・・わぁ~・・・」
移動だけではあるが体力温存の為、俺は小桜の温もりに包まれ、襲撃される可能性を考えずに、寝息を立てた。
【(はぁ~。ここまで無警戒ですと今後が大変ですわね)】
『そうじゃな、
リョータの命が今は狙われておらぬが、
将来的に狙われて行くじゃろう。
小桜よ、皆でリョータを守って欲しい』
【判っておりますわ神様】
そんな会話が小桜と琥珀、そして神様の間で交わされているなど知る由も無い俺は心地よい暖かさに癒されていたのだ
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