第50話:命を繋いだ野良猫

 僕は野良…名前も無く親もいない本当の野良。


 今日も食べ物を探して探して…ようやく食べられそうな肉を見つけ、口にした瞬間、蹴り飛ばされていた。


にゃっ?!


「このっ泥棒猫…!

 消え失せなっ!!」


 何度も何度も蹴って来る人間・・・どうして?


 だって下に落ちてた肉を口にしただけだよ?


 それなのに…どうして蹴るの?!


 意識が朦朧とする中、聞こえて来たのは子供の声と内なる声。


「その子を店の前で踏んだりしたら、

 店の信用がなくなっちゃうよ?

 要らないんだったら僕が魔の森に来てあげる!」


 ああ…僕は何処かへ捨てられ死ぬ運命なんだ…と思った所に心の声が届いた。


【俺の声が聞こえているか?

 助けてやるから、そのまま動くな】


 言っている事と内なる声の違いに戸惑ってしまうが、今は大人しく動かないでおこうと決めた。


「そ、そうだな。

 確かに店の信用あって

 客が来てくれるんだもんな。

 頼まれてくれるのか?」


 あぁ、蹴られなくて済むな…と思ってはいるものの、意識が飛びそうになって来た。


「うん、

 僕ちょうど採集の依頼を受けて来てるから

 に行く事が出来るんだ」


【今は信用しなくていい、

 そのまま気を失ったと思わせておけ】


 そんな声が聞こえた後、強い魔力を持つ何かが、その子の事を批判した。


あるじは人でなしですか?!】


 あるじ・・・?


 もしかして飼い主って意味なのかな?


 続けて聞こえた言葉で安心してしまう。


 ううん本当に捨てる訳ではないよ、その子を助ける為の嘘…そうでもしないと殺されちゃうからね。


 あぁ…人間にも優しい人いるんだな~…と保っていた意識が消えてゆく。


「そうか有難い。

 じゃあ…これで頼む」


 僕はお金で処理されてしまうんだ…と思い意識を失った。


 だから、その後の事は目覚めるまで何が起きたか知らない。


 気が付けば体中に走っていた痛みは全くなく、それどころか薄汚くなってしまった毛色が艶を放ち、匂いすら消えていて自分の身に何が起きたのだ!?と寝かされていた状態から飛び上がって警戒してしまった。


「あ、目が覚めたみたいだね」


 フー…フー…。


 警戒して威嚇する声を上げるのだが、見ている相手の目が、すこぶる優しく細められてるのに気付く。


【いくら蹴られていたからと言っても、

 同じ人間と思わないでちょうだい】


 ピクッ…これはヤバイ…。怒らせてはならない獣が傍にいる。


 ガタガタと震え威嚇が萎み、震えあがりそうになる。


「こ~ざ~く~らぁ?

 誰が威嚇しなさいって言った?」


【だ、だってあるじぃ~…】


 主と呼ばれた人が獣を睨むと「シュン」と耳が倒れ尻尾もヘニャっとなっていた。


「お前、お腹すいてたんだな。

 ほら…怒らないから飲みな」


 僕には10歳には見えていなかった。


 もっと上じゃ無いかと疑ったくらいだ。


 それでも空腹には勝てず、出されたミルクをゴクゴクと飲み干し腹がプクっと膨れる。


「ぷっ…。なんかコマーシャルに出て来る犬みたいだな」


【ちなみに主、

 その出て来た犬に名前はついているのですか?】


「ああ、ゴン太と付いてたから、

 コイツには権太って付けたいかも」


 彼が呟いた瞬間、ぴかー…。


「【あ】」やっちまった。


[よろしく・・・おねがいします・・・ご主人様]


 従魔に権太と言う名のオッドアイ灰色猫が加わった瞬間となった

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