第49話:見つけてしまったモノ

 翌日、ギルドの依頼を受けるつもりで、小桜を腕に抱き(本人は歩きたがったが俺が却下)階下に降りて行き、薬草採取を見つけ手に取り


「お願いします!」


 と受付に出した。


「あら、早いのね。今から行くの?」


「ううん、買い物してから行くつもり~。

 小桜の事を従魔だって見てくれない人もいそうだから、

 俺と同じ何かを小桜に買いたいんだ~」


 と言うのは建前で、本音としては市場調査をしたい、と思ったのだ。


「ふふふ、その子を安心して歩かせてあげたいって言うのね、

 やはり優しいわねリョータ君」


「へへへ…」


 剥がされた依頼書に受け付けをしたと言う印が押され、ポケットに仕舞いこみ、野菜などが売られているで有ろう地区へと足を向けた。


あるじ

 採集に向かうのではないのですか?】


 勿論、向かうけどね、異世界こちら日本むこうの食事が作れないかと思ってね、野菜や肉を見てみたいんだよ。


【食事する場所では調理された状態でしか見ませんものね。

 同じ野菜の名あるでしょうけれど、

 違った場合に疑われる…と言う事ですか】


 それもあるんだけどね将来的に料理に革命を起こしたいかな~って思ったんだ。


【…凄い事をサラっと…

 革命とか言わないで下さいまし】


 今現在さ、調味料…味付けって塩だけでしょ?


【聞いた話では一種類しかないと言われてますわね】


 探したらありそうなのが胡椒…あと山椒かな。


 山椒は山に自生してそうだし、胡椒も何かの実って事も有り得るからね、味付けのレパートリーが増えれば早死にする人も減ると思うんだよね。


あるじ

 (何て人…。自分の知識で他人を助けるなど…有り得ないわ)】


この見た目10歳児のナリじゃ無理だろう?大人にならないと信用して貰えないだろうし、子供の言葉を実行する大人なんていないしね。


 そうこうしている内に裏路地らしき場所に入り込んでしまっていた。


「しまった…話し込んでいて気付かぬうちに違う道に入り込んで…」


「このっ泥棒猫っ…!消え失せなっ!!」


 子猫の鳴き声…悲鳴が俺に届き顔を顰めてしまう。


 そちらに目を向けると蹴りつけられ殴り飛ばされ、ボロボロな子猫が踏みつけられそうになっていた。


 だから慌てて


「その子を店の前で踏んだりしたら、

 店の信用がなくなっちゃうよ?

 要らないんだったら僕が魔の森に来てあげる!」


 と叫んでしまった。勿論、捨てる気などサラサラ無い。


 口から出まかせで内なる声は真逆を伝える。


【俺の声が聞こえているか?

 助けてやるから動くな】


「そ、そうだな。

 確かに店の信用あって客が来てくれるんだもんな。

 頼まれてくれるのか?」


「うん、

 僕ちょうど採集の依頼を受けて来てるから、

 に行く事が出来るんだ」


【今は信用しなくていい、

 そのまま気を失ったと思わせておけ】


 「嘘つきは泥棒の始まり」…ではあるが今回は「嘘も方便」。


 蹴り飛ばされていた子を助けるつもりで声を掛けたのだ。


あるじは人でなしですか?!】


 ううん本当に捨てる訳ではないよ、その子を助ける為の嘘…そうでもしないと殺されちゃうからね。


 助ける為の嘘…そう聞いた小桜は驚きを隠せないでいた。


「そうか有難い。

 じゃあ…これで頼む」


 お金を出しそうだったので拒絶の言葉を紡いだ。


「いらないよ?ついでだもん」


「そ、そうか」


 真っ黒に汚れ意識が混濁している猫を優しく抱き上げ、森へと通じる門へと向かい始めると、あからさまに店主が「ほっ」とした顔になった。


 疑われてたんだな…。


 まあ冒険者の恰好をしていても、子供の言う事を信用しないやね

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