第47話:フェンリルの願い(2)

 ゲップ…と飲み干してくれたフェンリルの背をリョータは優しく撫でながら


「元気になってくれて良かった。

 これで集落に返す目途も立ったな」


 と戻すつもりでいる事を口にし、慌てたフェンリルは


『あのっ…お願いがあります!』


 と念話を送り、リョータが目が飛び出るくらいに驚いたのは言うまでも無い。


 へっ?!もしかして、君…念話が出来るの!?


【はい。驚かせて申し訳ありません。

 私はフェンリルの姫、助けて下さり有難う御座います】


 姫君でしたか、恐れ多くも平民が助け【…あなた様が助けて下さらなければ私は命がありませんでしたので謝罪は不要ですわ】


 食い気味に言葉を重ねたフェンリル。


 リョータは彼女の望みを聞く事にした。


 では姫様、お望みならば集落までお送り致しましょう。


【では従魔として下さいませ】


「へっ?!じゅ、従魔ぁ!?な、何で?」


 思わず心の声…念話では無く、素で声を出してしまうリョータはパニック状態。


【名前を教えて頂いて無いので、

 貴方様としか言えないのが苦しいですが、

 私を助け保護し無理強いをしない雰囲気は気づいておりましたの。

 ですから貴方様の傍で助けたいと思ったのですわ】


 そ、そう・・・なんだ。今更だけど俺はリョータ。


 本当の名前は隠蔽してるんだ。


【ではリョータ様、私に名を下さいませ】


 「様」は要らないよ。う~ん…なら…小桜ってどうかな?


 名付けた瞬間に淡く小桜の体が光って、従魔契約が成されたのだと示された。


【従魔にして下さり有難う御座います。

 ギルドにて従魔登録をして頂ければ、

 何も言われる事は御座いませんわ】


 やっぱり登録しなきゃだよね~。


 でも従魔って首輪だっけ?それ付けるんだよね?


 嫌・・・じゃないの?


【ふふふ。本当に優しいのね。

 大丈夫リョータの身を守る為ですもの】


 俺の身を守る…?あぁ、いちゃもん付けられるって事を避けられるのか。


【はい、学校でしたか、

 あちらに通う事になれば、

 従魔と共に学ぶ事が出来ますが、

 使役して無いと見なされれば、

 別の人によって奴隷のように扱われてしまいます】


 …そうか…俺に使役されている、と判れば奴隷扱いはされないんだね。


【はい】


「じゃあ小桜、これから宜しくね」


「くうん(はい)」


 嬉しそうに俺の撫でる手を受け入れてくれる小桜・・・。


 くっ…可愛すぎる!


 小桜を再び抱きかかえ、ギルド受付まで一緒に向かう。


 小桜は防衛と攻撃どちらが得意とか有るの?


【フェンリルは攻撃が得意ではありますが、防御も出来ますよ】


 おお!それは凄いね。


「あらリョータ君、その子を連れて何処かへお出かけ?」


「ううん。

 実は…いつの間にか従魔契約しちゃってたみたいで、

 登録したいと思って連れて来ました」


 連れ帰った時は気づかなかった。


 だけど落ち着いてみたら使役してた…。


 じゃあ信用して貰えないかな?と思ったけれど杞憂きゆうに終わる事になる。


「怪我をしている時に気付かなかったのねぇ。

 登録しておきましょう。名前は?」


「コザクラ!」


「まぁ…その子にピッタリな可愛らしい名前ね。

 リョータ君の血を一滴、落として頂戴」


「はい」


 ギルドに置かれている使役した時に使う針で指先をチク…血を一滴カードに垂らすとカードに「従魔:小桜」と言う文字が追加された。


「これで小桜さんは、リョータ君の従魔って登録が出来たわ。

 アンクレットにするの?それとも首輪?」


「足は怪我してたから首輪が良いと思うんだけど、

 小桜それでイイ?」


「あん!(構いませんわ)」


 尻尾を振って同意しているとアピールする小桜。


 溺愛しそうで怖くなったのは言うまでも無い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る