第45話:保護したのは・・・

 幼い命の眠りを妨げないように、そおっと抱き上げ森の入り口に瞬時に戻った事で、転移魔法を覚えた事に気付いた。


 鑑定を掛けて見ると性別は女の子で種族は「フェンリル」と出た。


 どうやら仲間がハンター職に討伐され、集落に危険を知らせに向かおうとし、罠に嵌って動けなくなっていたらしい。


 …何とも言えないな。


 人間のエゴが、小さな命を奪おうとするなんて…。


 寝息を立てているの背を優しくナデナデ。


 フワッフワな毛並みに癒される。


 ふぁ~もっふもふ♪


 彼女が知らせに行こうとしていた集落に、危険は去ったが1匹が犠牲になり、残された子は傷つき保護されているって教えられないかな?


【やってみましょう】


 優秀なガイドが、彼女が暮らしている集落へ連絡を取ってくれるようだ。


【…回答を頂けました、

 そのを保護してくれ、有難く思う。

 人族の中にも心優しき者がいると知れて良かった。

 だそうです】


 そっか…かなり犠牲が出てたんだね。


 この子の仲間も…犠牲になってる訳だし。


 元気になったら集落に戻すから、と伝えてくれる?


【承知しているそうです。

 流石に幼き子が外の世界に居続けたいと、

 望まないとは言えないので、

 彼女の意思に従って欲しいとの事です】


 罠に掛かって外の世界を「嫌い」なままでいて欲しくは無い。


 かと言って無理強いしたくないから、その提案は受けようと思う。


 そうこうしているうちに門まで戻って来ていた。


 この子…どう説明したらイイんだろ。


【感じたまま報告してみられては如何いかがでしょうか】


「お?その獣、どうした?」


「あのね、

 罠に掛かって怪我をしていたのを見つけて、

 周辺を見回したけど、

 罠の持ち主がいなかったんだ。

 だから僕・・・悪いとは思ったけど助けちゃった」


 保護した獣が討伐対象だった場合、勝手に連れ帰ってはならぬ…とギルド規則に書かれてたのは知っている。


 だからこそ「悪いとは思ったけど助けた」と伝えたのだ。


 もう冒険者として活動する事は、出来なくなるだろうな。


 でも彼女を助けられたんだ、資格を剥奪されても本望だ。


 寝息を立てていた彼女が目を覚まし、周囲をキョロキョロ・・・自分が自由になっている事に驚き、人の腕に抱かれている事に戸惑いを感じた。


(なっ?!何が起きたのかしら。

 私は確かに金物の歯に噛まれていた筈なのに、

 自由になって男の子の腕に抱かれてるなんて…)


「・・・見るからに子供の犬っぽいな。

 だったら資格剥奪はまぬかれるだろう。

 ギルドに保護した事を伝えれば、

 元気になるまで許可して貰えるさ」


「?!そうなの?じゃあ行ってみます!」


 流石に怪我をした彼女を放置しろ・・・と言う訳ないと踏んではいたが、まさか元気になるまで保護できるとは思っていなかった。


 残る懸念は「フェンリル」をギルド宿舎で保護できるか、と言う事だけだった

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