第38話:学生寮を見学(2)

 警戒している門番に声を掛けようと身構えた瞬間に声を掛けられてしまった。


「止まれ!」「ここに何用で訪問したか答えよ!」


「9月の入学前に学生寮を見学させて頂きたく訪問いたしました」


 学校見学が普通ではなかったのだろうか、門を警備する男性2名は固まってしまった。


 いやさ?流石に固まらなくてもいいんじゃない?!


 そんな変な聞き方…して…ない…よね!?


 確かに問いかけの言葉は子供らしくないけど…そこまで?!


 オロオロしてしまう俺の視線に学校の外に用事があるのか、1人の先生らしき人物が門番の背中から顔を出して


「あら、どうしたの?」


 と声を掛けてくれた(助かった!)


「あのね僕、

 学校で生活する場所を見たいと思って来たんだけど、

 お兄さんたち、何故か固まったまま動かなくなったの」


 嘘は言ってない。


 フリーズしたのは俺が大人ばりの会話を返した所為せいではあるが、馬鹿正直に教えてしまえば彼らのプライドが傷つくと思って言葉を濁しただけ。


「まぁ、そうなのね。

 わたくしは関係者ですから案内いたしますわね」


「え、いいの?

 お兄さんたちの許可とか要らないの?!」


「ふふふ、彼らは罰を受ける事になると思うわよ?

 学生寮に案内するわね」


「ありがとうございます!」


 ワクワクしながら関係者を名乗る女性の後ろに付いて行くと、男子寮・女子寮と書かれた建物が現れ、校舎とは渡り廊下で繋がっている事が伺えた。


 フリーズしてしまった門番が懲罰を受けてしまう…と言う言葉は聞き流していたリョータ。


 後々、そんな事をヤラかせば懲罰がある…と知る事となるのは少し先の話。


「魔法学校は基本、

 15歳まで学べる場所として作られて、

 遠くから通えない生徒の為に男女別で寮が作られたの」


「そうなんだ」


「男女別では有るけれど1階は1年生、

 5階は5年生と別れているわ」


「10歳から学べるの?」


「えぇ、そうよ。

 1年生の内に基本的な事を学ばせ、

 2年生からは応用させて行き、

 最終的には臨機応変に立ち回れるようになって行くよう

 導くのが魔法学校なの」


 確かにそうか。


 基礎知識なしで魔法、ぶっぱなして怪我を負わせてしまうリスクより、しっかりと基礎を学んだ状態で魔法を放つのでは雲泥の差は生まれるやね。


 俺の場合「考えた魔法」を「作れてしまう」からこそ基本は押さえておく必要がある。


 じゃなければ周囲に人がいる状態で魔法を暴走させちまったら・・・怖い結果を生む将来さき見えないもんな。


「流石に部屋の中は見る事、出来ないですよね?」


 外観は市営アパートっぽさ満載な建物だと言う事は理解した。


 次に気になるのは内装。


 それ、見れませんよね?と思ったら


「リタイヤした生徒が1名、いるから見れるわよ?」


 と言われてしまい速攻で


「はい!」


 と勢いよく返事をしてしまった。


「ふふふ、

 物凄く学校を楽しみにしてくれてるんだって、

 判る返事ねぇ。

 ついてらっしゃい」


「ふあぁ~い・・・」


 見たくて仕方ないとは言え、ちとはしゃぎすぎた。


 1年生が暮らすエリアの最奥…心地よい風と暖かな日差しが降り注ぐ空間に1部屋、空気を入れ替える為か開け放たれてるな。


「魔法の授業について行けなかった子が、

 使っていた部屋だから見るのは自由に出来るわ」


 まあ得手不得手えてふえてってのがあるから、脱落者がいても変では無いが…きっと基礎的知識の段階でさじを投げたんだろな。


 知りたい事が今は多い俺からしたら「勿体ないオバケが出る」って思いがあるけど、今は見学する事に集中しないと、何かしらの用事で出かける予定だった案内してくれてる人の時間が減ってしまうもんな、そこまで凝視しなくても生活するカモ…くらいで留めなきゃな

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る