第36話:選定の儀(2)

「次!」「はい」


 返事した俺を見た判定員(?)が、不思議そうな顔をして声を掛けてくる。


「もしかして孤児院の子供か?」


「うん。

 自分が何処で生活していたか

 覚えてないから孤児院で保護して貰ったんだ」


「・・・あ~…記憶が無いって事か。

 それでも生きて行く手段として、

 勉強する事を選んだんだな。偉い偉い」


 頭を撫でられたモンだから


「えへへ」


 かなり照れ臭かったが嬉しかったのでそのまま説明を聞く体制を整えた。


「名前と年齢を言って水晶に手を乗せてくれるかい?」


「はい。リョータ・スズキ10歳」


 右手を水晶に乗せるとキラキラと虹色のオーラ(と言って良いのか判らないが光)が壁面に向けて伸び、こう書かれていて目が点になった。


【職種:全職種に適応する才能を持つ】


 ・・・ナニコレ…チートデスカ?チートデスヨネ?!


「「なっ!?す、全てだ…と?!」」


 全職種に適応できる才能を備えた子供…そんな馬鹿な…と言う選定者の声が聞こえるがリョータは「それどころ」では無かった。


【我は風の神、風魔法を授けよう】【我は大地の神、土魔法を授ける】

【我は水の神、水魔法を授ける】【我は火の神、火魔法を授けよう】

【我は光の神、光魔法を授ける】【我は闇の神、闇魔法を授ける】


(ちょ、ちょっ…ま、待って…ぎゃ~~~~~~~~)


 そう魔法を行使する為に必要な魔法を神様、直々に渡されていてパニックに陥っていたのだ。


 それだけでなく、大量の魔法が送られて来てしまい、気絶寸前まで追い込まれている状態と化していた。


 選定者も混乱してリョータの異変に気付いていなかったのだが、次に選定して貰う為に並んでいた親が異変に気付いた。


(これは・・・?!

 全ての神々から能力を授かっているから顔色が悪いのではないか?)


回復魔法リカバリー


 聞こえないように使える魔法をリョータに施すと、顔色が少しだけ、戻って行くのを感じた。


 あ・・・れ?物凄く楽になったけ・・・ど。


 あぁ、回復魔法リカバリーを掛けてくれた人がいるんだな。


 全回復フルリカバリーさせる魔法を自分に使い、後ろに向かってお辞儀をする。


回復魔法リカバリーを掛けて下さって有難うございます』


『いや。君は全回復させただろう?

 神々から能力を授かると得てして顔色を悪くするからな』


「(なるほど~…とは言え)この状況、

 大丈夫なんですかね?」


 チラリと選定者を見ると未だ呆けた状態のまま、ああでもない、こうでもないと言い合いをしている。


「確かに頂けぬな。

 選定者殿、いい加減に次の選定をして頂かなければ、

 並んでいる者たちが困ってしまいますぞ」


 彼の一言で呆けていた選定者は気づいたのか、バツが悪そうに


「リョータは何にでもなれると判定されたので、

 自分がなりたい職を選んで構わない」


 と言って来た。


「わかりました~」


 選定者に軽く会釈し、助け舟を出してくれた侯爵様に頭を深々と下げ、施設を後にした。


 どの職になっても身に付く…と言うのであれば魔術師か魔法剣士。


 どっちにするか悩んでしまうが、9月まで悩めるかと、自分の適性を自分で見極める羽目になったのは言うまでも無い。


 チートになったのは嬉しいが、自分が「魔術師」が適正なのか「魔法剣士」が適正なのかくらい知りたかったな…と溜息を内心で吐き出したのは言うまでもないが、まさか…この先、その所為せいで絡まれまくりの目立ちまくりになるなど、思いもしてなかった。


 自分で希望したチートでない…とは言え、授かった能力、それを発揮してしまい将来、世界にただ1人の4Sになってしまうと思う訳もなく、色々と便利に魔法が使えたらなー…くらいの軽い気持ちだった事を後悔する事になる

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