第35話:選定の儀(1)
地図を頼りに領主邸の裏手に行くと、選定の儀用に作られたであろう施設に、調べて貰いたいと望む子供たちが、親に伴われて長蛇の列を作っていた。
あらら、本来なら親同伴で調べに来るのは当然だわな。
まあ孤児でも調べて欲しいって言えば調べてはくれるだろうけど、うーん…保護者的役割を持つシスターがいないと駄目って言われたらハンナさんにお願いするかぁ。
近づくにつれ、そこが騎士団が常駐する場所のような空間だと言う事が、見え隠れしているな。
施設的には充実してるなぁ。
訓練場に常駐カ所、遠い地域の人用の寮みたいな場所すらあるしなぁ・・・。
『アイツじゃないのか?
リッツの森で保護され、
拝謁で領主様の養子になる事を断ったってガキ』
ん?何だ?!何か見られてるし言われてるな。
『あんな奴が?
領主様も見る目が無さ過ぎないか?!』
何で「あんな奴」とか「アイツ」とか言われ無きゃならんのかね?
領主が「残念な考えの持ち主」って「知らない」から言えるだけだよな。
「おい、お前」
あのさ「噂」されてるんだったら名前くらい知って無いの?
「お前」って言われて「何?」って答える子供、いないと思うけどなぁ。
騎士っぽい人からの声かけを無視して選定場所を目指していたのだが、そこに絶対零度な声音が聞こえて来た。
「何を話しかけてるのだ?
選定の儀に訪れた少年の名を呼ばずに、
失礼な態度を取る騎士に用はないのだが?」
「お前」と呼び捨てにした騎士様、顔面蒼白になってるよ。
ざまをみろ。
例え噂の子供だろうと「名前」ではなく「お前」と呼べば、団長さんクラスの人から雷落ちるの理解してないのかね。
「済まなかったな。
名を聞いておらぬので君とさせて貰うが、
彼らには再指導する事になるので許して欲しい」
「・・・気にしてないよ?
だって名前を呼ばなかったのは、
知らなかったからだろうし、
騎士様たちが僕を誰かと間違っていた可能性、
あるでしょ?」
単に別人だったと強調すれば、声を掛けそこねた騎士は白い顔色から青い顔色へ変わって行くのが判った。
そうなるのは仕方ないよね?相手の子供が「どんな容姿だったか」を「知らない状態」で「近しい子供に絡んだ」んだから、他人だよ?って言われれば顔色なくすのは当然だもんな。
「ふっ…。確かにな、
君も選定の儀を受けに来たのかい?」
「うん!なれる職を知って勉強するんだ!」
まあ子供らしい言い方にしてるが、この世界を知るには勉強は必須。
殆ど無知で「落とされた」からな。
魔法の仕組みも知って…あぁ、俺は「想像しただけで作れてしまう」んだったな。
「そうか、希望の職になれると良いな」
「うん!!」
バツが悪そうな顔つきの騎士を尻目に、俺は選定の儀が行われている空間へ足を向けると想像した通り、水晶玉に手を乗せて選定している姿を黙認できた。
「・・・侯爵子息殿は剣士」「ありがとうございます!」
「・・・公爵令嬢様は魔術師」「あり・・・がとう・・・ございます」
次々と調べられて喜ぶ親子と落ち込む親子が、その場所から退席して行く。
ああ…軍事的役割を持っているのに、剣士じゃないと言われれば、落ち込んだりするのと同じで、自分の希望する職種では無かった事で意気消沈してるのか。
施設を後にする人たちの姿は、褒めまくる親と、ゴミを見るような眼で子供を見る親とに綺麗に分かれていた。
列の一番後ろに並び、自分の番が来るまでドキドキしながら待つことになった。
待ちながら列が進んで行くうちに、リョータの後ろに1組の親子が並んだ事に彼は気づいてない
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