第34話:選定の儀は・・・
大事な事を聞きそびれてしまっては、元も子もない。
「あのね、その選定の儀だっけ。
それって何処で行われるの?」
場所を知らなければ行く事も出来ねぇしな。
「領主邸で行われる事になっていて、
訪問して伝えれば何時でも調べて貰えるわよ?」
・・・えっと・・・だが断る!!って言えねぇ・・・めっちゃ断りたい。
「そう・・・なんだ(あれ?俺、屋敷に行ったのに何も言われず出て来たよな)。
でも僕、保護されたからか知らないけど、
領主様のお屋敷まで行ったのに何もされなかったなぁ」
違う人の屋敷が選定の場所…って事ないよね。
さっき、領主邸で行われるって言った筈…なのに俺、受けるどころか話にも出して貰ってない…。
あ…もしかしなくても「あの」領主が俺を取り込む事に必死だったし、俺が学校に行きたがってるって情報、持ってなさそうだよね?それなら教えて貰えてないのも納得できる…。
「ま、まあ!何て事!!
場所が違ったのかも知れないから一緒に行ってあげましょうか?」
「調べる場所が違うんだね。
教えて貰えれば職員さんの仕事、
取らなくてすむよ?」
コテン…とあざとく(?)首を傾けて提案するとポッ…と頬染めた職員さん(チョロ…げふん)。
「なんて良い子なの。
じゃあ領主邸は拝謁で向かったのかしら?」
「うん。
どうして森にいたのか聞く為だったと思う」
流石に魔力が膨大で、取り込みたかったから、と言われれば侯爵様の印象、悪くなるばかりだろ。
「だったら裏側には行ってないのね?」
「うら?」
そうか、屋敷って言うくらいだ。
正面玄関があれば裏玄関もあるのは当然か。
「近道があるから街の地図を持ってるかしら?」
「うん!」
未だ、主要カ所の場所を確認していない俺は、小さく畳みズボンに地図を入れていた。
ガサっと出すとケイトさんが道順をエンピツのような品で書き込んでくれる。
「お姉さんが使ってる道具なぁに?」
どう見ても鉛筆…異世界定番な羽ペンで書くのだとばかり思ってたから意外だ。
「これは木炭を原料にして作られた、
文字を簡単に書いて消せるペンシールって言うのよ」
わ~お。ここにも英語もどき・・・。
まさか・・・乙女ゲームとやらの世界とか言わないよね?神様。
【それは無い。
ただ、そなたが暮らしていた世界に似通っているだけじゃ】
まあ、そうですよねー。
聖女様が何時の時代にいたのか知らないけど、鉛筆っぽい品を伝えてる可能性はあるよな。
全く同じなら価値観が低すぎる防具とか武器が、存在する訳が無いし…。
地球と同じなら札が作られている筈。
でも此処は硬貨のみ。
巾着にコインを入れて持ち歩くだけとは言え、流石に見える形では持つ訳が無いからな。
っと脱線したな。
「教えてくれてありがとー!」
「早速、選定の儀を受けて見るの?」
「うーん。
着替えを買っておきたいから、
時間とか関係ないよね?」
「えぇ。何時、行っても調べて貰える筈よ」
なら買い物を先に済ませて寮生になれるならなって、住環境を少しでも整えたいな。
「じゃあ先に買い物すませてからにする~」
「ふふふ。いってらっしゃい」「いってきまーす!」
ほんと宿屋の女将さんの雰囲気すら持っていそうなケイトさんだな。
返して貰った地図には、領主邸の裏手までの道のりが書かれていた。
それを見ながら歩いていると、領主邸の裏手が昨日の防具屋近くにある事実に、足が止まってしまった。
こんな所にあったんかーい。
何で気づかずスルーしたんだろ。
防具や武器を手に出来た事を、どんだけ喜んでたんだか…と言うよりギルマスのヤラかしに呆れすぎて周囲の確認してなかった…ってのが原因かもな
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