第29話:武器屋(2)

 まあ日本円に換算しない方が正しいんだろうけど、それでも安そうに思うから心配になってしまう。


 元サラリーマンとしては売り上げてなんぼ・・・だしな。


「君に合いそうな武器を探して来たから、

 持って見てくれるかしら?」


[わかったー]


 練習用の武器かと思ったけど、これ実戦用だよね?


 鞘に入った剣を持たされ、グリップの部分を握って見ると、しっくり来る。


 スラリと人がいない方向に抜いてみれば、キラキラと剣身ブレードが光っていて、とても美しい。


 俺が持たされているのは片手剣らしい。


 まあ初心者が両刃の刀…もとい、剣を持ったとして、扱える訳が無いからな。


 振り下ろすとブン・・・と風を切る音が聞こえるくらいに楽勝で振り回せている。


 希望としては刀を扱って見たかったんだが、流石に異世界に刀は無いからな。


 この時、スマホが異世界版に改善(改良)された状態となり、日本の品が購入できるようになってるなど、気づいてないからこそ「無い物ねだり」だとリョータは諦めていた。


「どうかしら?」


「・・・だいじょう・・・ぶそう・・・です」


「可愛らしい声が台無しねぇ。

 無理して声を出さないでちょうだいな」


[いくらですか?](言葉に甘えておこう)


「オーウェンさんに請求書、

 出しておくから持って行きなさい」


[いやいや、それは駄目ですよ!

 僕の武器をギルマスに支払わせる何て出来ません!]


「いいのよぉ~。

 あの馬鹿が声が出なくなるくらいの事、

 やらかしたんでしょ?

 だったら武器の1つくらい、

 払わせたってバチは当たらないわ」


 うわっ…酷い言われようだけど、通常運転なのかな?


[いいのかなぁ・・・]


「ふふふ心配しなくて大丈夫よ。

 オーウェンは何度か、やらかしてるから、

 その度に給料から引かれてるのよ」


 マジか・・・やらかしまくって給料天引きとか・・・どんだけ「やらかし」てんだろうな。


[だけど・・・]


「気にしなくていいわ。

 大人になって買いに来てくれれば、

 それで十分よ」


 折れてくれないか・・・。

 

[わかった~ありがと!]


 子供サイズの剣を手に持った・・・までは良かったが何だっけ・・・腰につけるアレ。


「そう言えばホルダーって持ってないでしょ?」


 それだ!


[もってない・・・]


 ガックリと肩を落としている風を装えば


「子供用のが無いからお下がりで悪いけど、

 持って行きなさい」


 と言って店主のお母さんが差し出してくれたのは、使い古されたホルダーだった。


[これ、大事なホルダーじゃないの?

 使って良いの?!]


 何処からどう見ても誰かが使わなくなって数年、経過しているかのような風合い。


 おばさんの子供が使っていたのでは無いか?と思える品だった。


「おばさんの子供が使ってたホルダーなんだけどね、

 もう使う事も無いから使ってちょうだいな」


[そんな大事な品、使えないよ!]


 子供が成長したと共に、使わなくなったんだろうけど、流石に自分の息子が使ってたホルダーって記念品になりえんか?!


 そんな品…貰ったりしたら後が怖いんだけどっ!


「大事な品だからこそ、

 君に使って欲しいのよ?

 あのが殺しかけたんだから、

 それくらいしないとね」


 パチン・・・とウインクして来た店主。


 今「バカ息子」と言いました?まさか・・・


[もしかして・・・オーウェンさ・・・「息子が馬鹿をして御免なさいね」]


 全部、書き終わる前に知る事となったのは言うまでも無い。


 まさか、まさかの理由で、武器は無料で入手する事が出来てしまった。


 片手剣が無料ってのはギルマスがヤラかしたからで、ホルダー付きで無料…後々、何かしら起きそうで心配ってか、不安なんだが…何も起きないことを祈ろう

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