第25話:ギルマスに殺されかける

 マジックバッグ・・・と言い放ったエコバッグは、いつの間にかマジックバッグとしての機能が備わった便利アイテムに変化していた(勿論、機能的にはエコバッグ)


 エコバッグ(以下エコと省略)に毒消し草を入れて門へと戻ると、どこかしこから良い匂いが漂っている。


「もしかして昼?」


「おう!丁度いい時間に戻れたな。

 街に食事が出来る屋台が並び始めてるんだ。

 金銭を持って出て無いなら依頼を終わらせて、

 昼飯として使えば良いさ!」


 俺の声を拾ってくれた門番の兄ちゃん…俺から見ると10代後半だと思う彼に


「ありがとー!お兄ちゃん!!」


 と兄呼びをすれば、物凄く照れくさそうな顔になっている。


 俺だって自分より年下の野郎を兄として呼ぶの、こっぱずかしいんだぞ。


 心配性を発症してしまったギルマスが、建物前でウロウロして居る姿をリョータが見つけてしまう。


「あれ?!ギルマス?」


 体格的に大きいから「くまモン」みたいだ。


 リョータの声に反応して振り向いたギルマスの顔は、心配そうな顔から安心しきった顔へと変わり、無事な姿を抱きしめるべく走り寄って行く様は猪突猛進・・・。


 止める術など無く、リョータはギルマスの腕に閉じ込められてしまう。


「リョータ!無事で良かった!!」「うぐっ・・・」


 ちょ、ちょっと加減ってもんしないかね?相手は10歳の子供だぞ?!


 こんな力いっぱい抱きしめたら・・・


「ぐ・・・る゛・・・じ・・・ぃ(苦しい)」


 異世界転生3日で、あの世行きとか・・・やめてくれ。


「な?!何やってんだよギルマス!

 子供が死んじまう!!」


 強く抱きしめられ息が出来ない状態に陥っていたリョータは、偶然ギルドから出て来た冒険者によって助け出された。


「・・・けほっ・・・げほげほっ」


(ぜー・・・ぜー・・・ぜー・・・クウキガオイシイデス<空気が美味しいです>)


 ようやく事態に気付いたギルマス・・・顔を青ざめさせ、土下座状態。


 あ~・・・異世界こっちに土下座ってあるんですかね~。


「す、すまん!つ、つい嬉しすぎて・・・」


「・・・俺に謝罪すんじゃねぇよギルマス。

 殺されかかったコイツに謝罪すべきだろ。

 坊主、依頼を受けて戻って来たんなら、

 金額を倍額、請求して良いからな?」


「けほっ・・・そ・・・ん・・・なコト・・・けほけほ・・・して大丈夫・・・なの?!」


 まともに会話すら出来ねぇ。


 この冒険者が出て来てくれなかったらと思うと・・・悪寒。


「無理して会話するな。文字、書けるんだろ?

 まあチビが死にかけたんだから元凶に請求しても許されるだろ」


 と言って筆談を提案した冒険者の男性が、文字を記入できるアイテム(この時、ペンシールである事に気づいていない)を手渡してくれた。


 勿論、渡してくれた彼はリョータが暫くは必要だろうと判断したから渡しただけ。


 上位冒険者ともなれば手に入れるのも容易いアイテムでもあるのだろう。


 何も言わず手渡したのだがリョータは何も気づいていなかった(目先のトラブルに気を取られていたからではある)。


[倍額って高く請求してイイって事?]


 筆談してるのだが、10歳が書ける文字に変換されている、と言う事にリョータは気づいてない。


「ああ、ギルマスが名前聞いてねぇからチビと呼ぶが、

 チビを無事だったからと言って、

 息が出来ないくらいに抱きしめちゃー駄目だ」


 って事は・・・ギルマスが依頼として受け付けてくれたのが10本で銀貨1枚・・・5枚の銀貨を本来なら貰うのに倍額・・・金貨1枚って事?!やりぃ!


 物流的価値は理解できてないが、買い食いくらいなら銅貨10枚あれば買えるだろうと踏んでいるリョータ。


 だが、日本の価値観のまま買い物に行き、安すぎる価格にドン引きする事になるのは少し先の事

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る