第23話:入学するまで冒険者!

 ギルマスに聞いた話では冒険者をやっていても学校には行けるらしい。


 孤児院にいながらにして、冒険者をやって、学校に行く…って生徒が過去にもいたとの事。


 なので安心して冒険者になる事にした。


「じゃあ、見本の依頼書にあった毒消し草?それ受けていい?!」


「早速、受けるのか。カードを出してくれ」


「はーい!」


 本来なら「鑑定」を持っていなければ、簡単に初心者が採取依頼を受けられる事は無いのだが、ギルマスは「綺麗さっぱりいる」らしく、見本で持って来た依頼書を常駐案件ではあるがリョータが受けた事として処理してしまった。


「気を付けろよ?

 リョータが保護された森に自生してる毒消し草は、

 見つけようと思っても簡単に見つかりにくい草でもあるんだ」


「わかった~気を付けるね」


 変だな・・・。


 毒消し草を「知っているか?」とも「場所を知ってるか?」とも聞いて来ない。

 場所が森の奥地ならば、子供の依頼を受け付ける訳が無いとは思ったが、何も言わずとも受け付けた、と言う事は浅い場所に有ると言う事。

 武器を持ってなくとも魔法を作っちゃえば万が一、魔物と遭遇したとしても対処は出来るハズ。


 もしかして記憶の底に覚えているかも知れないと思ってるんだろうか?


 流石に「それ」は無いだろ。


 ギルマスともあろう人物が、不確かな事を依頼として新人を行かせる筈が無い。


 彼(ギルマス)が気づいてないだけなのだが、行かせた後になって「しまった!」と思い出すのは少し先である。


「準備が出来たら出発するか?」


「うん!いってきまーす!!」


 2階から階下へ降り、ギルドを後にして街へと繰り出し、森がある門方面…ハンナさんと歩いた道を行き始めると、看板を見て目が点。


「・・・これ、文字よめなくても理解できるようにしてるのか?」


 吐き出した言葉は周囲には聞こえてなかったようで、大人な喋り方を聞かれなかったらしい。


 ハンナと一緒に歩いた時には気づかなかったが、そこにはパンの絵が書かれていたり糸巻きが描かれていたりと、特徴的な図柄が看板として掲げられているのだ。


 子供用の武器を買うにも資金が無いから、自分の鑑定で見つかれば良いな、と思って門番にカードを見せ「気を付けて行け」と言われ「はい」と答え森へと向かった。



 * * * *


ギルマスside~


「しまった!リョータの奴に毒消し草を!!」


 今更ながらギルマスが気づいたのは、リョータが毒消し草を「知らない」可能性があると言う事を忘れて依頼を受け付けてしまった事だ。


 本来なら記憶がない…と言われた時に、薬草図鑑などで「これが毒消し草で見つかりにくい」とか「これが回復草で需要が多いが、これまた見つかりにくい」と説明しなければならないのに、ギルマスは「教え損ねて」しまっている。


「大丈夫だろうか・・・あいつに鑑定でもあれば、見つける事は容易いが、

 10本もの毒消しを見つけられるかは判らんな」


 ギルマスの懸念は後々、杞憂きゆうに終わるのだが、リョータが鑑定持ちだと「知らない」からこそ心配になった。


 鑑定持ちな冒険者が「1人としていない」のも事実で、見ただけで毒消し草だと判る特徴は無い…だからこそ「見つかりにくい」のだが…リョータは職員が驚くほどの量を見つける事となる。


 とは言え自分はギルマスとしての仕事が山積みで、彼の心配ばかりをしていられないのも事実だった。


(どうにか無事に戻って来てくれると嬉しいんだがな・・・)


 新人が採集を失敗してもランクが下がる事はない。


 それくらい見つかる確率が低いのが毒消し草。


 次々と依頼されて来る内容をランク別に仕分ける作業に戻りつつも、窓の外に広がる森に視線が自然と向いてしまう。


 いかん、いかん・・・と頭を振り仕事に集中するギルマス。


 リョータが50本もの毒消し草を採集して戻って来るなど、夢にも思っていなかった

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